今年もまたひどい監査結果

監第42号
平成16年4月20日
市民オンブズ岡崎
 渡 辺 研 治 ほか6名(天野、田仲、太田、上村、上村、堀米) 様
岡崎市監査委員 畝部和男

同     上野 精

岡崎市職員措置請求の監査結果について(通知)
 平成14年12月26日付けで提出のあった標記の請求について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第4項の規定に基づき監査した結果は、下記のとおりです。平成16年3月23日付けで提出のあった標記の請求について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第4項の規定に基づき監査した結果は、下記のとおりです。


第1 請求の受理                            
  本請求書については、「事実証明書」の追加等の補正を求め、補正後、所要の法定要件を具備しているものと認め、平成15年1月14日、これを受理した。本請求書については、所要の法定要件を具備しているものと認め、平成16年3月23日、これを受理した。

第2 請求の要旨

岡崎市議会政務調査費は「岡崎市議会政務調査費の交付に関する条例(以下「条例」という。)」、により「議員の調査研究に資するため(条例第1条)、年間一人あたり72万円が支給されている(条例第3条)。」そして「使途基準に従い使用するものとする(条例第5条)。」とされ、使途を厳しく制限されている。そこで公文書開示をして内容を調査したところ、政務調査とは名ばかりの市議会議員に対する第二の報酬のような扱いがされていた。
 条例は広聴費の支出は認めているが、広報費は認めていない。したがって広報のために支出された分は条例に規定のない違法な支出である。
 パソコンが各会派に一台(五人以上の会派は二台)、プリンターが一台配当されているにもかかわらず、昨年度購入も勘案すれば個人が利用するとしても人数を超えてしまう購入をしている会派も出てきた。
 昨年沖縄県や九州への視察が多いと指摘したところ、平成14年度は東北、北海道への視察が増え、特に特定な議員にあっては町並みの視察と理由をつけて出かけており、視察先の自治体の役場にも顔を出していない。調査研究の視察とは考えづらく、観光旅行が目的の旅費支出であることを証明している。
 領収書のないガソリン代や電話代、政務調査とは関係のない書籍の購入費、備品購入費等不合理な支出または不法・不当な公金支出であり、市長は市議会各会派に対し不当利得した全額を返還させることを怠っている。以上を会派ごとに整理すると下表のとおりとなる。よって、市長は各会派に下表に示した返還すべき金額を請求し、市に返還することを求める。

会 派返還すべき 金額
自民新風会 7,153,273円
自民党市議団 5,005,429円
ゆうあい214,782,486円
公明党1,702,845円
日本共産党岡崎市議団 241,587円
民主クラブ1,103,035円
19,988,655円


第3 監査の実施

 監査は、請求人らから証拠の提出及び請求の要旨を補足する陳述を受けたほか、議会事務局から提出された書類についての調査と、関係職員及び関係人からの事情聴取等により実施した。

1 請求人の陳述                      

 請求人らに対し、地方自治法第242条第6項の規定により平成15年1月29日、証拠の提出及び陳述の機会を与えた。 請求人らに対し、地方自治法第242条第6項の規定により、平成16年4月20日証拠の提出及び陳述の機会を与えた。          
 陳述の場には、次の請求人が出席し、請求書の補足説明が行われた。
(1)陳述に出席した請求人
 渡邉研治、天野茂樹、太田修、上村皓吉、上村純子
(2)陳述における補足説明の概要
 請求人らが陳述において述べた補足説明の概要については、以下のとおりである。
 @ 政務調査費についての会派や議員の意識については、「不十分な額の議員報酬を補うものである。せっかく交付された費用だから全部使い切らないともったいないと思う。多少問題があっても全会派が申し合わせれば非難されることはないだろうと考える。」といった程度ではないか。要するに政務調査費が市民から議員への信頼関係をベースとして、使途を限定されて預けられた大切な公金であるという意識が希薄である。           
 A 旅費の支出について、定額旅費を採用しているので、実費で支払われたホテル代に差益が生じ、私腹を肥やす結果となっている。
 B 税金を原資とした政務調査費を使用して、活動をしているのであるから、調査研究としてどのような「効果」があったのかわかりやすく説明する「結果報告書」が公開されるべきである。

2 関係職員等の調査

 地方自治法第199条第8項の規定により、平成15年1月28日議会事務局関係職員に対し、平成15年1月29日及び平成15年2月6日議会各会派等関係議員に対して、それぞれ事情聴取を行った。監査対象事項
  措置請求書に記載されている事項及び請求人らの陳述の内容を勘案した結果、平成14年度岡崎市議会政務調査費のうち、返還請求に係る支出が違法、不当な支出であり、不当利得したものがあるかを監査対象事項とした。
3 関係職員等の調査
  地方自治法第199条第8項の規定により、平成16年4月20日及び平成16年4月26日議会事務局関係職員に対し、平成16年4月20日及び平成16年5月10日議会各会派関係議員に対して、それぞれ事情聴取を行った。

4 監査執行上の除斥

  本監査請求にあたって、議会選出の監査委員は地方自治法第199条の2の規定により除斥した。

第4 監査の結果

 本請求についての監査の結果は、合議により次のとおり決定した。

1 結 論
  本件請求を棄却する。
2 返還請求に係る事実の概要
 (1)自民新風会(返還請求額 7,153,273円)
  ア 研究研修費の支出
   (ア)食事代の支出(263,000円)
  イ 調査旅費の支出
   (ア)札幌市、函館市視察(585,000円)
   (イ)大曲市、角館町、白石市視察(429,640円)
   (ウ)歌志内市、札幌市、小樽市視察(473,000円)
   (エ)秋田市、小岩井農場、仙台市視察(461,640円)
   (オ)鹿児島市、西之表市視察(634,200円)
   (カ)須玉町視察(24,740円)
 ウ 資料作成費の支出
   (ア)デジタルカメラ 4台等の購入(218,610円)
   (イ)カメラの購入(27,090円)
   (ウ)プリンターの購入(31,353円)
   (エ)中古パソコンの購入(45,000円)
  エ その他の経費の支出
   (ア)電話代(1,560,000円)
   (イ)ガソリン代(2,340,000円)
   (ウ)プロバイダー代(60,000円)
 (2)自民党市議団(返還請求額 5,005,429円)
  ア 調査旅費の支出
   (ア)根室市、釧路市、帯広市視察(153,790円)
   (イ)釧路市、帯広市、千歳市視察(141,980円)
   (ウ)館林市、足利市、妙義町、諏訪市視察(93,850円)
   (エ)岡山市、岩国市視察(64,180円)
   (オ)阿児町、亀山市、高山市視察(84,820円)
  (カ)函館市、千歳市、札幌市、小樽市、余市町視察(120,030円)
  (キ)奥尻町、八竜町、酒田市、村上市視察(372,420円)
  (ク)宜野湾市、那覇市視察(92,370円)
  (ケ)掛川市、御前崎町視察(28,060円) 
  (コ)宇都宮市視察(61,460円)
  (サ)米子市、益田市、防府市、呉市視察(213,260円)
  (シ)徳島市、北九州市視察(90,580円)
  (ス)天城町、名瀬市視察(139,820円)        
  (セ)米沢市、大館市、青森市、八戸市視察(126,520円)
  (ソ)網走市、北見市、旭川市視察(133,000円)
  (タ)玉名市、熊本市、指宿市視察(105,010円)
  (チ)那覇市、沖縄市、前原市視察(120,610円)
  イ 資料作成費の支出
  (ア)パソコンの購入(162,330円)
  ウ 広報費の支出        
   (ア)市政報告 4件の支出(301,339円)
  エ その他の経費の支出
   (ア)電話代(960,000円)
   (イ)ガソリン代(1,440,000円)
(3)ゆうあい21(返還請求額 4,782,486円)
  ア 調査旅費の支出
   (ア)鳥取市、出雲市、松江市視察(344,640円)
   (イ)六ヶ所村、盛岡市、江刺市視察(565,000円)
   (ウ)宇部市、三原市、倉敷市、神戸市視察(363,880円)
   (エ)今治市、高松市視察(259,920円)
   (オ)東予市、高松市視察(257,600円)
  イ 資料作成費の支出
   (ア)パソコン周辺機器CD−RWドライブの購入(35,490円)
  ウ その他の経費の支出
   (ア)電話代(1,080,000円)
   (イ)ガソリン代(1,620,000円)
   (ウ)プロバイダー代(255,956円)
(4)公明党(返還請求額1,702,845円)
  ア 研究研修費の支出
   (ア)パソコン研修費の支出(137,000円)
  イ 調査旅費の支出
   (ア)食事代の支出(3,850円)    ・
  ウ 資料作成費の支出
   (ア)プリンター 3台等の購入(121,620円)
   (イ)CD−RWドライブ等の購入(16,608円)
   (ウ)MOドライブの購入(22,365円)
   (エ)スキャナー等の購入(14,801円)
   (オ)デジタルカメラ修理代の支出(7,875円)
   (カ)デジタルカメラの購入(49,350円)
  エ 資料購入費の支出
   (ア)書籍(絵本「雨」等)の購入(2,940円)
  オ その他の経費の支出
   (ア)電話代(480,000円)
   (イ)ガソリン代(720,000円)
   (ウ)プロバイダー代(126,436円)
(5)日本共産党岡崎市議団(返還請求額 241,587円)
  ア 資料作成費の支出
   (ア)デジタルカメラ等の購入(46,876円)
  イ 資料購入費の支出
   (ア)商工新聞代等の複数部数蹄入(50,772円)
  ウ 広報費の支出
   (ア)市議団ニュース 2件の支出(111,711円)
  エ その他の経費の支出
   (ア)FAXの購入(32,228円)
(6)民主クラブ(返還請求額1,103,035円)            
  ア 調査旅費の支出
   (ア)上屋久町、鹿児島市、川辺町視察(118,900円)
   (イ)松江市視察(128,440円)
  イ 資料作成費の支出
   (ア)プリンターの購入(45,840円)
  (イ)デジタルカメラ 2台の購入(97,755円)
  ウ 資料購入費の支出
   (ア)書籍(「新編岡崎市史」)の購入(112,100円)
  エ その他の経費の支出
  (ア)電話代(240,000円)
  (イ)ガソリン代(360,000円)
3 理 由
 地方自治法(昭和22年法律第67号)第100条第13項及び第14項の規定に基づき、議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、「政務調査費」を条例で定めるところにより「会派又は議員」に対し支給することができるとされている。
岡崎市においても、「岡崎市議会政務調査費の交付に関する条例(以下「条例」という。)」を定めている。政務調査費の額は、議員1人につき年額72万円とし、会派にあっては、その額に当該各派に属する議員の数を乗じて得た額としている。
 なお、平成14年度においては、6会派に対して支出しており、そのうち、ゆうあい21は18,489円、公明党は322円、日本共産党岡崎市議団は901,591円、民主クラブは23,720円を残余金として返納しており、自民新風会と自民党市議団については、交付額を上回る支出があり、満額の交付が決定された。
また、議長あてに収支報告書の提出が義務付けられており、本市も条例第7条により収支報告書の提出を義務付けるとともに、一層の透明性を確保するため、支出に係る領収書等の写しを提出するよう定めている。         
 使途基準については、条例第5条に「別表に定める使途基準に従い使用するものとする。」としており、その別表により平成14年度では、@研究研修費、A調査旅費、B資料作成費、C資料購入費、D広聴費、Eその他の経費の6項目に分類し、各項目の内容を定めている。
 そこで、以下この使途基準に沿って、会派別に本件各支出行為について検討する。
(1)自民新風会
 ア 研究研修費の支出
   前記(1)ア(ア)の食事代の支出については、自民新風会所属議員が議員活動を行うための知識や情報を得るために、市の理事者、職員などを講師に招き、勉強会を開催した際支出したもので、「会派の毎月定例勉強会取扱い」により、会場費と食事・弁当代を1名3,500円とし、個人負担の懇親会等の費用とは区分して定められている。勉強会は6回実施され、各議員の議会、委員会での質問や調査研究に役立っている。このような会場費をも含めた食事・弁当代の支出が社会通念上相当とする範囲を著しく超えているとすることはできない。
 イ 調査旅費の支出
   前記(1)イ(ア)の札幌市、函館市視察については、本市の観光夏まつりや文化施設の整備、駅前整備を進めるうえで、札幌市の手づくりから夏の風物詩に定着したまつり、函館市の文化施設の整備や駅前地区の整備計画等の実情を調査している。
   前記(1)イ(イ)の大曲市、角館町、白石市視察については、大曲市の公共施設や商店をつなぐ市内循環バス、角館町の歴史的景観保護、白石市の情報センターを核とした保健、福祉、教育などのネットワ←クシステムの実情を調査している。
   前記(1)イ(ウ)の歌志内市、札幌市、小樽市視察については、歌志内市の第三セクターによる廃棄物エネルギー化事業、札幌市のPFI手法による事業の取り組みの課題、小樽市の歴史的建造物の保存を始めとしたまちづくりの実情を調査している。
   前記(1)イ(エ)の秋田市、小岩井農場、仙台市視察については、秋田市のごみの新しい処理方法や環境保全、小岩井農場の観光等複合事業の実情、仙台市の政令市への取り組みを調査している。
   前記(1)イ(オ)の鹿児島市、西之表市視察については、市民との協働、地域に根ざしたまちづくりを進めるうえで、鹿児島市のボランティア活動や西之表市の支援活動の実情を調査するとともに、文化施設の整備について調査している。
   前記(1)イ(カ)の須玉町視察については、本市のまちづくり、空床対策を進めるうえで、空床教室を生涯学習所などに有効利用してまちづくりを進める須玉町の実情を調査している。
  なお、請求書中には、多人数で視察を行っていることについては、問題があるがごときの記載がある。しかし、議員それぞれに見方、考え方があり、議員それぞれが同じ情報を共有したうえで、会派内で意見交換し、議論を深めることができる。また、義会活動に活かす方法も、議員それぞれが行うことができるようにすることも、当然の活動であると思われる。したがって、当該視察を何名で行うかについては、会派の裁量事項であり、本件においては、特に問題とすべきものは、見出すことはできなかった。
ウ 資料作成費の支出
   前記(1)ウ(ア)・(イ)・(ウ)・(エ)のパソコン、周辺機器等の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書を作成、整理するとともに、会派の議員による情報の共有化を図るためのものである。
エ その他の経費の支出
   前記(1)エ(ア)・(イ)の電話代、ガソリン代の支出については、事務の煩雑化を防ぐため各派代表者会議において、実費を下回る額として、「電話代10,000円、ガソリン代15,000円を限度」とする申し合わせをし、事務の簡素化を図るため各派代表者が金額を確認した上で、「政務調査費支払証明書」を作成して、支出することができることとしている。
 電話代の積算根拠は、議会事務局において実情調査を経たうえ、定められたもので、市議会だよりに議員連絡用として記載した加入電話、議会事務局に登録してある連絡用のFAX回線、議会事務局に登録してある緊急連絡用の携帯電話等の3回線について、加入電話、FAXで3分以内の市内通話を1日5回、携帯電話で1日につき2分間通話したものとして試算した結果、議員の調査活動には月額10,000円を超える利用があるものと認められたことによったものであり、合理性がある。
 ガソリン代の積算根拠は、議員が行う市内及び周辺市町村への調査活動には自家用車を使用することが多いところ、議員が調査活動をするための旅費の支出はされていない。他都市では職務を行うための費用について、地方自治法第203条第3項により費用弁償を受ける例も見られる。しかし、本市においてはかかる支出はされていない。また、議員は、議会閉会中にも登庁して活動をしている。
 そこで、前同様に議会事務局において、議員の調査研究活動の拠点となる市内旅費について「岡崎市職員等の旅費に関する条例」をもとに試算すると、市中央部から周辺への活動を月に20日実施したとして16,000円になる。実際には議員は休日にも活動し、周辺市町村にも活動を広げているため、議員の調査活動に対する市内旅費は、少なくとも同金額を超えるものと認められるが、事柄の性質上さらにこれよりも控えめな月額15,000円と定めたものであり、前同様合理性がある。
 このように、電話代、ガソリン代の積算根拠にはいずれも合理性があり、定額による実費補助とした支出方法についても妥当性を欠くとすることはできない。
 また、議長のガソリン代については、議長は、議会を代表する立場のほか、議員活動の面から見ると、一議員という側面もある。したがって、議長の活動は、すべてにおいて議会を代表する公人としての活動ばかりでなく、議員調査活動として、自家用車を使用する場合も当然あるわけで、議長が他の議員と同様にガソリン代を受け取っていることをもって、不当利得しているとすることはできない。
  前記(1)エ(ウ)のプロバイダー代の支出については、鼓員活動や議会、委員会においての調査研究をするための情報収集と会派の議員による情報交換や共有化を図るためのものである。議員は非常勤特別職であり、会派控室に限らない職務遂行環境が必要であり、情報収集を行うための環境整備を目的に、上限を月額5,000円として支出することができるとした各派代表者会議での申し合わせに基づき支出したものである。
 なお、請求人らは「昨年の監査結果から監査委員の指摘は、パソコンは会派内にすべてあることになっており、自宅のパソコンのインターネット接続を認めていない。」と主張しているが、監査委員は「市庁舎内の会派控え室に設置のパソコンへのインターネット接続費用で、議員活動や議会、委員会においての調査研究をするための情報収集と、会派議員間の情報交換や情報の共有化を図るためのものである。」と述べているだけであり、請求人らの主張するようなことは述べていない。
(2)自民党市議団
 ア 調査旅費の支出
  前記(2)ア(ア)の根室市、釧路市、帯広市視察については、根室市の防災行政の実情、釧路市の環境保全、帯広市の健康づくりへの取り組みの実情を調査研究している。なお、請求人らは、調査旅費の請求者が1名であったのに8名で行動していたことを問題視しているが、議員の調査研究活動には、政務調査によるものとは別に、一般行政調査によるものもあり、他の7名はこれにより参加していたものである。一般行政調査についても当然のことながら、議員1人当たりの予算が定められており、この1名はそれをすでに使用していたので、政策集団の一員として視察の意義を含め認識を共有するため、政務調査費を使用してこれに参加したことによるものであり、何ら問題とすべきところはない。
 前記(2)ア(イ)の釧路市、帯広市、千歳市視察については、本市の駅前開発とまちおこしのために、釧路駅周辺の実情、帯広市の中心市街地、千歳市の町並みなどの実情を調査研究している。また、視察先の自治体に顔を出さず直接に現地を視察したことについては、政務調査の性質上、自治体担当者の説明、案内などを避けて、直接、住民の生の声や町の雰囲気、施設利用者の意見等の情報を収集することの方が政務調査の目的にかなうとの配慮によるものであると認められる。
 したがって、視察先の自治体に顔を出していないとの一事をもって、調査に名を借りた観光旅行であるとすることはできない。
 前記(2)ア(ウ)の館林市、足利市、妙義町、砺訪市視察にづいては、本市のまちづくりの参考とするため、それぞれの市町における教育・文化施設の調査研究を行っている。
 前記(2)ア(エ)の岡山市、岩国市視察については、岡山市の環境行政と岩国市のTMOによる中心市街地活性化対策の実態調査を行っている。
 前記(2)ア(オ)の阿児町、亀山市、高山市視察については、阿児町の鵜方駅周辺の実情、亀山市と高山市における町並みの保存についての実情を調査研究している。                             
 前記(2)ア(カ)の函館市、千歳市、札幌市、小樽市、余市町視察については、本市のまちづくりの参考とするため、函館市の城址公園の整備や千歳市、札幌市、小樽市の教育文化施設、河川環境への取り組みの調査を行っている。(なお、余市町の視察は、報告書に台風のため訪れることはできなかったとの記載があった。
 また、その旅費については、支出されていなかった。)また、視察先の自治体に顔を出さず直接に現地を視察したことについては、上記(2)ア(イ)と同様である。
 前記(2)ア(キ)の奥尻町、八竜町、酒田市、村上市視察については、奥尻町については、津波被害を問題としたのではなく、東南海地震の発生が叫ばれている中、災害全般にわたる防災行政や災害時における住民のボランティア活動の実態調査を目的としたものであり、八竜町においては、サンドクラフトによる観光対策、酒田市では、バイオ研修センター、村上市では、河川を使った教育施設への取り組みの調査を行っている。
 前記(2)ア(ク)の宜野湾市、那覇市視察については、宜野湾市における海浜公園の運営手法について調査するとともに、那覇市の福祉総合施設の調査を行っている。
 前記(2)ア(ケ)の掛川市、御前崎町視察については、掛川市におけるお城を活かしたまちづくりを調査するとともに、御前崎町の観光資源を活かしたイベント計画の調査研究を行っている。       
 前記(2)ア(コ)の宇都宮市視察については、宇都宮市における特産品を活かした観光客誘致や農業体験施設の実情の調査を行っている。
 前記(2)ア(サ)の米子市、益田市、防府市、呉市視察については、本市のまちづくりの参考とするため、米子市、呉市のごみ行政の実情を調査するとともに、益田市の中心市街地の活性化対策、防府市の歴史文化を活かしたまちづくりの調査を行っている。                       ・
 前記(2)ア(シ)の徳島市、北九州市視察については、徳島市における市街地隣接型の都市型産業の拠点づくりの実態を調査するとともに、北九州市の中小企業への支援や福岡県のリサイクル総合研究センターについて調査を行っている。
 前記(2)ア(ス)の天城町、名瀬市視察については、天城町における農業研修宿泊制度を始めとした特色ある農業者支援制度の実態を調査するとともに、名瀬市のスポーツと観光の一体的取り組みによる経済効果の創出について調査を行っている。
 前記(2)ア(セ)の米沢市、大館市、青森市、八戸市視察については、米沢市における繊維産業の実情を調査するとともに、大館市の生涯学習によるまちづくりや青森市、八戸市のそれぞれ特色あるごみのリサイクル行政の調査研究を行っている。
 前記(2)ア(ソ)の網走市、北見市、旭川市視察については、本市のまちづくりの参考とするため、網走市における複合拠点施設と図書館の調査を行うとともに、北見市の廃棄物処理施設の実態、旭川市のパブリックコメント制度について調査研究を行っている。                     
 前記(2)ア(タ)の玉名市、熊本市、指宿市視察については、本市のまちづくりの参考とするため、玉名市におけるTMO活動による中心市街地のまちづくりの実態を調査するとともに、熊本市、指宿市のそれぞれ特色のある文化教育施設の調査研究を行っている。
 前記(2)ア(チ)の那覇市、沖縄市、前原市視察については、本市のまちづくりの参考とするため、那覇市の中心市街地の街区整備、沖縄市の中心市街地の空床対策を調査するとともに、前原市のごみ処理の実態の調査を行っている。
 イ 資料作成費の支出
 前記(2)イ(ア)のパソコンの購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書を作成、整理するためには、議員控室に備え付けのものだけでは不十分なため、さらに購入したのものである。
 ウ 広報費の支出
 前記(2)ウ(ア)の市政報告の支出については、会派の議会活動、市の政策の内容を市民に報告するためのものであり、日をおかずして4件の領収書が存在することについては、短期間に報告書の刷り増しを行い、その都度支払いをしたことによるものと認められる。
 エ その他の経費の支出
 前記(2)エ(ア)・(イ)の電話代、ガソリン代の支出については、上記(1)エ(ア)・(イ)と同様である。

(3)ゆうあい21
 ア 調査旅費の支出
 前記(3)ア(ア)の鳥取市、出雲市、松江市視察については、市民との協働の市政を進めるうえで、鳥取市の市民活動などに対する補償制度、出雲市のスクールヘルパー事業を調査するとともに、松江市の観光活性化の施策の実態調査を行っている。  
 前記(3)ア(イ)の六ヶ所村、盛岡市、江刺市視察については、国の政策として原子力発電が進められる中、六ヶ所村の核燃料のリサイクル、廃棄の実態等を浜岡原発との関連において調査を行ったものであり、盛岡市のごみ処理行政及び余熱利用の進め方と江刺市の福祉行政の実態調査を行っている。
 前記(3)ア(ウ)の宇部市、三原市、倉敷市、神戸市視察については、本市では、市民が主役のまちづくりを進めるとともに、効果的な行政運営を行うため行政改革の推進や行政評価の導入を検討しているが、そめ先進都市である宇部市の実態を調査するとともに、三原市の福祉行政、倉敷市のPFI事業の推進と課題、神戸市の危機管理体制について実態調査を行っている。
 前記(3)ア(エ)の今治市、高松市視察については、本市の岡崎駅東土地区画整理事業を進めるうえにおいて、また、東岡崎駅の再開発の必要性から先進都市である今治市の鉄道高架事業、区画整理事業の実態を調査するとともに、高松市の生涯学習センターの機能と課題など、新図書館建設に向けての実態調査を行っている。
 前記(3)ア(オ)の東予市、高松市視察については、本市の地域交流センターの整備を進めるうえでの参考とするため、東予市の地域交流センターの機能の検証と実態調査を行っている。高松市視察については、上記(3)ア(エ)と同様である。なお、ゆうあい21の議員が高松市で合流したことについては、政策集団である会派の所属議員が、会派内の統一テーマについて共有することのできた情報をもとにして、会派内で意見交換し議論を深め会派の政策としてまとめていくことや、それを活かす方法を議員それぞれが行うことができるようにすることも、当然の活動であると思われ、問題視すべきものとは思われない。
 イ 資料作成費の支出
 前記(3)イ(ア)のパソコン周辺機器の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書を作成、整理するためのものである。
 ウ その他の経費の支出
 前記(3)ウ(ア)・(イ)・(ウ)の電話代、ガソリン代、プロバイダー代の支出については、上記(1)エ(ア)・(イ)・(ウ)と同様である。
(4)公明党
 ア 研究研修費の支出
 前記(4)ア(ア)のパソコン研修費の支出については、配備されたパソコンや購入した周辺機器を有効に活用し、会派議員の効率的な議会活動を図るために実施されており、その成果は資料作成や視察報告会に活用され、歳員の情報交換や情報の共有化にも役立っており、使途基準に反しているとは思われない。
 イ 調査旅費の支出                    
 前記(4)イ(ア)の食事代の支出については、会派4名で愛知県の防災行政について現地調査を行ったものであるが、旅費は実費で支出されている。食事代は定額の日当の代替としてその額の範囲内で支出されたものであり、その中で会派議員の意見交換も行われており、個人負担すべき経費とは思われない。
 ウ 資料作成費の支出
 前記(4)ウ(ア)・(イ)・(ウ)・(エ)・(カ)のパソコン周辺機器等の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書を作成、整理するとともに、会派の議員による情報の共有化を図るためのものである。なお、プリンターの購入については、保有するプリンターが故障し、修理不能となったことによるもので、会派の議員数を超えて保有しているものではない。
 前記(4)ウ(オ)のデジタルカメラ修理代の支出については、補償期間内であるが、故障内容が補償対象とならず、無償修理が受けられなかったものである。
 エ 資料購入費の支出
 前記(4)エ(ア)の書待の購入については、子どもの読書離れを防ぐため、また、赤ちゃんの言葉と心をはぐくむための事例を調査研究するために購入したものであり、議会、委員会での質問や調査研究に役立っている。
 オ その他の経費の支出
 前記(4)オ(ア)・(イ)・(ウ)の電話代、ガソリン代、プロバイダー代の支出については、上記(1)エ(ア)・(イ)・(ウ)と同様である。
(5)日本共産党岡崎市義団
 ア 資料作成費の支出              
 前記(5)ア(ア)のデジタルカメラ等の購入については、調査したことを画像記録として残し、市議団ニュースや市政報告会の際に使用したり、市民からの要望があった場合には、現場を撮影し、即座に当局に改蓄要求を伝え、対応するためのものである。
 イ 資料購入費の支出
 前記(5)イ(ア)の商工新聞代等の複数部数の購入については、市政に関する情報をさまざまな分野から調査するためのもので、資料は、会派複数議員が同時に必要となる湯合もあり、各自で保管、メモ付けなどをする場合もあり、必要の度合いにより、複数購入しているものである。         
 ウ 広報費の支出
 前記(5)ウ(ア)の市議団ニュースの支出については、会派議員の活動、議会や委員会での決定事項、意見書や請願に対する各会派の態度等を市民に報告するためのものである。
 エ その他の経費の支出
 前記(5)エ(ア)のFAXの購入については、市庁舎内の会派控え室に設置し、調査活動等のための情報を迅速に収集するためのものである。
(6)民主クラブ
 ア 調査旅費の支出
 前記(6)ア(ア)の上屋久町、鹿児島市、川辺町視察については、本市のまちづくりの参考とするため、上屋久町における自然と人とが共生する地域づくり、鹿児島市における市街化調整区域の活性化対策、川辺町における環境問題対策の調査研究を行っている。
 前記(6)ア(イ)の松江市視察については、本市のスポーツガーデンの取り壊しが決定されたことにより、スポーツガーデンに代わるレジャー施設の検討や中心市街地活性化のために、スケートリンクに代わる効用を持つものとして、松江市におけるノンアイススケートリンクの実情調査を行っている。
 イ 資料作成費の支出
 前記(6)イ(ア)・(イ)のパソコン周辺機器等の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書を作成、整理するとともに、会派の議員による情報の共有化を図るためのものである。また、プリンターが3台あることについては、そのうちの1台は修理不能となったことによるもので、会派の議員数を超えて保有しているものではない。
 ウ 資料購入費の支出
 前記(6)ウ(ア)の書籍の購入については、議員として市史を知っておくことは、岡崎市のまちづくりのためにも重要なことで、歴史を踏まえたうえでの判断が必要な場合もあり、単に本市の歴史的背景を調査するためにとどまるものではない。
 エ その他の経費の支出
 前記(6)エ(ア)・(イ)の電話代、ガソリン代の支出については、上記(1)エ(ア)・(イ)と同様である。
以上会派別に、本件各支出行為について検討したが、各会派の調査旅費の支出については、すでに述べたとおり、それぞれ目的をもって視察が実施されており、視察報告書も会派の長に提出されている。その効果については議会や委員会におての質問の作成等の参考として活用され、議決機関としての使命である審議に役立たせている。 
 なお、視察の成果については、直ちにこれが表われるものばかりではなく、長い間の議員活動の中で表われてくるものもあり、いずれにしても中長期的視野に立って市政の発展にも役立つものと判断される。
  次に、政務調査費の視察旅費については、この形態が一般行政調査や委員会による視察と何ら変わるものではなく、「岡崎市議会政務調査費交付取扱要領」に岡崎市職員等の旅費に関する条例の規定に準じて支出するものとされている。
 ところで請求人らの指摘の案件について、実費弁償という観点からすれば、旅費支給について問題なしとしないものがある。しかしながら、旅費の解釈については「旅費は、旅行中に必要となる交通費、宿泊料等の経費に充てるため支給される費用であり、いわゆる実費弁償の一種である。実費弁償という本来の性格から言えば、現実に必要とされた一切の旅行のための経費を過不足なく弁償しうるものでなければならないということもできようが、実際に使用した費用が真に旅行のために必要であるかどうかの判定は極めて困難な場合が少なくないと考えら れ、旅行者が提出する証拠書類に基づいて個々の旅費種目の支給額を決定しようとする証拠方式によるときは、いたずらに旅行者や旅費事務担当者の手数を煩瑣なものとするばかりでなく、制度の濫用の恐れもないではない。これに対して、定額方式は、標準的と認められる実費額をもって機械的に計算するわけであるから、事務的には簡易であり、かつ、比較的経費が節約できるという利点がある。」とされており、各会派が、本市の旅費条例を準用して、定額支給方式によったことをもって直ちに違法性があるとすることはできない。
 ちなみに、航空運賃については、平成15年度分の旅費の支給から、平成15年3月7日付け職第107号「旅費の取扱いについて(通知)」により、旅費の精算方法として、支出負担行為時又は精算時に当該旅費の領収書その他支払いを証明する書類を提出するよう改正されている。
 その他の経費の支出については、前述の使途基準@からD以外の経費で、会派等が行う調査研究活動に必要な経費として議長が必要と認めたものとしており、「岡崎市議会政務調査費交付取扱要領」に使途基準が定められている。その中で、(a)会派等が行う調査研究活動及び議会活動並びに市の政策について住民に報告、 PRするために必要な経費、(b)資料作成等会派事務のための委託料、アルバイト、賃金、筆耕翻訳料、(c)会派事務のための通信運搬費としての郵便料(切手・はがき・小包・速達・書留)を使途に充当できる経費としている。前記(2)ウ(ア)・(5)ウ(ア)の広報費の支出は、いずれも上記(a)の規定に紡当しており、違法性はないというべきである。
 ちなみに、平成15年6月23日に、「広報費」及び「交通通信費」の項目を条例別表に入れる改正が行われている。
 以上のように、本件各支出行為は、いずれも請求人らが主張する違法・不当な支出であり、不当利得したものがあるとは認め難いから、本件請求はこれを棄却する。
(4)本件についての、監査委員の意見は以上のとおりであるが、これに関連し付言するに、政務調査費は、市からの補助金を原資として行われるものであるから、議会事務局と議員が密接にその事務に関係するものである。議長は各会派に対し、説明要求等ができるとされており、議会事務局が議長を補佐する立場からも、各会派の 長あてに提出された視察報告書などを議会事務局において一元的に管理することを検討されたい。また、市民から疑念を持たれないように視察報告書のさらなる充実を図るとともに、閲覧あるいは公開等についても検討され、より一層の透明性の確保に努力されるよう要望する。 
 パソコン等の機器については、会派で所有するものであるが、議員の幅広い活動に鑑み、議員個人宅への貸出しもあり得ることである。現行規定のうえでは、台帳については5万円以上の物品を購入した場合にのみ記載することになっているが、パソコンの周辺機器等についても主だったものについては、金額にこだわることなく台帳に記載し管理することを要望する。

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市民オンブズ岡崎ニュース36号