市民オンブズ岡崎

2000.12.7
第三回愛知県内情報公開度ランキング調査結果
1 はじめに

   一昨年、昨年に引き続いて三回目となる愛知県内の情報公開度ランキングの調査をしました。今回は2000年10月までに情報公開条例を施行している自治体を対象として、今年の5月から8月までに支出した首長さんと議長さんの交際費の支出関係文書の開示請求を行い、交際相手に関する情報が開示文書中にどの程度公開されているか、コピー代が幾らかについて調査したほか、本年10月現在に施行している各条例を入手し、「条例の施行前の情報も条例の公開対象となっているか」「条例中に知る権利が明示されているか」「何人も公開請求をすることができることになっているか」について条例文言をもとに条例自体についての評価を加えました。したがって、昨年と異なる評価項目としては、議長交際費の公開度調査を加えたことと、条例施行前の情報が条例の対象となっているかどうか、という項目を加えた点です。

 昨年から今年にかけてあらたに条例を制定した自治体が増え、本年10月の段階で県内では愛知県を含め、47の自治体が条例を施行しています。しかし、このうち、水害に見舞われた西枇杷島町と資料の入手が間に合わなかった江南市の二自治体については調査対象から除外し、さらに、施行前情報を一切公開しなかった知多市については調査ができなかったため、最終的には愛知県を含めた44自治体を対象としたランキング調査となりました。

 この調査は今年8月から10月にかけて、知多半島地区を除く尾張地区については名古屋市民オンブズマン、豊明情報公開を考える会、愛知消費者団体連合会が、知多半島地区については市民オンブズ知多半島が、西三河地区については市民オンブズ岡崎が、東三河地区については豊橋の情報公開をすすめる会のメンバーがそれぞれ協同して実施しました。

2 採点基準等

採点基準等については採点基準表に記載したとおりです。ちなみに、議会を実施機関とする条例や議会の情報公開条例が未制定の自治体では、議長交際費についての情報は0点という結果となります。また、文書としては非公開部分がないものであっても、公開された文書に記載された情報の内容が乏しく、交際相手が判然としないようなものについては、情報の非公開と同様の評価をしています。情報公開制度の本来の目的は情報を市民が知ることにあるわけですから、情報を隠そうとして非公開にしたかどうかは問題にはならないと考えた結果です。

なお、条例文言についての素点は、各項目10点を満点として評価しました。このうち、「施行前文書への条例の適用」に関する評価で、半田市に対して6点の素点を加えているのは、改正後の新条例は新条例施行後の文書に対してのみ適用されるとする一方で、旧条例は旧条例施行前の文書に対しても適用される、という定め方をしているため、全ての公文書に対して非公開処分を争うことができる点を評価した結果です。

3 総合評価

 1位は武豊町と扶桑町で、100点満点換算で93点、3位が美浜町で同88点、県内の市では半田、蒲郡、犬山、高浜も100点満点換算で88点でしたが、美浜町とは素点のわずかの差で総合ランク4位に入ったのが最高でした。最下位は一色町で100点満点換算で24点、続いて清洲町の同31点、尾西市の36点、長久手町の38点と続いています。長久手町のすぐ上の順位の愛知県が議会情報の素点が0であるにもかかわらず100点換算で50点であることからみれば、長久手町以下の4自治体の公開度の低さが際だった結果となりました。一色、清洲、尾西、長久手の「四人組」は別として、全体に愛知県内の自治体の公開度は良くなっており、100点満点換算で70点以上の自治体は44自治体中26自治体ありました。4自治体の奮起を期待したいところです。

 このなかで、全国オンブズマンの調査で昨年5位に入って話題となった愛知県は県内のランキングでは40位、100点満点換算で50点、名古屋市は34位、100点満点換算で57点と、いずれも低いランキングに止まっています。愛知県も名古屋市も議会の情報公開条例が未施行であることが順位低迷の大きな原因となっていますが、仮に議長交際費について知事や市長並みの公開がされたとしても愛知県は34位、名古屋市は12位止まりと考えられます。両自治体の差は条例文言によるところが大きいのですが、情報の公開の姿勢という点では両自治体は既に愛知県内では見劣りすると言って良いでしょう。

4 交際費の開示度

 交際費の開示度は毎年、確実によくなっています。今回の調査では、首長交際費も議長交際費も見舞いまで全面公開するという自治体が12,見舞いについては個別的に判断する、という運用基準を設けている自治体をあわせると、17自治体が見舞いについても公開していることになります。反対に、交際の相手方をまったく公開しない、という自治体は一色町だけで、交際相手の個人名の公開をしないという自治体は一色町のほかには幸田町、清洲町(但し職名は公開)、長久手町、新城市、尾西市の5自治体しか存在しません。

 交際相手の情報の公開が交際事務に支障を来す、という考え方が全く根拠のないものであることが明らかです。また、この5自治体中、幸田町と新城市の条例には「知る権利」が明記されています。まさしく「仏つくって魂いれず」です。

5 条例について

 今回は施行前文書が条例の対象となるかどうかについて調査しました。11自治体が何らかの形で条例の対象とする、という文言をもうけていました。本年10月1日から条例を施行した自治体は大府市、知多市、新城市、幸田町、足助町、小坂井町、田原町の7市町でしたが、このうち、知多市以外の6市町は今回の調査のための請求に対して文書を開示してきましたが、知多市は頑なに、対象文書が条例の対象となっていないことを理由として文書の開示をしてきませんでした。しかし、7市町中、幸田町は知多市と同様、施行前文書を対象とする規定をもっていませんが、任意開示の形で情報を開示しています。知多市については条例の文言のみならず、対応の硬直性も問題と言わざるを得ません。

 施行前文書が条例の対象となっているかどうか、という点は、現在の行政施策がそれまでの施策の延長である以上、市民が現在の行政施策を評価するために重要になってきます。施行前文書を対象としないような条例の制定は、情報の意義について十分な理解のもとでなされたかについて疑問があります。

 少なくともこれから条例を施行あるいは制定する自治体の取り組みは、情報公開制度について遅れていると言わざるを得ません。制定が遅れた以上は良い条例を制定していただきたいのですが、条例施行が遅れている以上、施行前の文書も条例の対象とするものにする義務があるのではないでしょうか。

 さて、今回条例文言で満点をとった自治体は7つありましたが、今回の三つの評価項目以外にも、条例を評価するポイントとして、条例の対象とする公文書を「決済、供覧に供した文書」と限定せずに、広く役所で使用する文書を対象としているか否か、と重要な論点があります。私たち自身、この論点を今回の調査項目に入れなかったことを反省していますが、この対象公文書の範囲の論点は次回から評価の対象とする予定ですので、上位の自治体が来年も高得点を得られるという保証はありません。情報公開条例が真に民主主義(住民自治)に欠かすことの出来ない制度として機能するように、条例文言や運用の見直しを常にしていただきたいと思います。

6 コピー代について

 今回の調査対象となった44自治体中31自治体がコピー代を10円としています。かつて愛知県も名古屋市もコピー代を30円としていましたが、いまだに30円のコピー代を徴収する自治体は今回の調査では清洲町だけになりました。20円以上のコピー代を徴収する自治体の言い分の多くは、コピー代には人件費が含まれている、というものですが、情報公開のコピー代に人件費を含ませるという考えは、情報公開制度をサービスと考えていることにつながります。しかし、情報公開制度は広報などの単なるサービスとは異なり、本来の民主主義行政に必要不可欠なもののはずです。特に「知る権利」を条例上明記しながら、人件費をコピー代実費に上乗せする自治体の姿勢は「知る権利」に対する無理解を露呈しています。

 情報公開制度の本来の趣旨からすれば、投票の際に実費を負担する必要がないのと同様に、コピー代を無料とすることが理想ですが、せめて実費に近い10円とすべきです。

7 交際費の内容について

次に、今回は、公開された情報をもとに、交際費の使われ方について若干の分析を行いました。

(1) 三ヶ月間の支出件数トップは岡崎市

評価をするための情報を公開していない愛知県と名古屋市(いずれも議長交際費の支出件数を公開していない)を除いた42自治体で、公開対象の今年5月?7月の交際費の支出件数を調査したところ、岡崎市が市長、議長交際費をあわせて実に186件と、ダントツのトップでした。二位は豊田市で110件と、西三河の隣接都市が一位、二位を独占しています。岡崎や豊田では市長が交際費でおつきあいをしないと市政がうまくいかないといった特別の要因があるのでしょうか。しかしそれにつけても、岡崎市のこの数字は2位の豊田市、3位の豊川市(107件)の件数と比較しても突出しています。岡崎市の支出件数を支えているのは市長交際費で、当時の岡崎市長さんは三ヶ月間で153件の支出をしていたのです。なぜ岡崎市の市長さんの支出件数がこれほど多いのか、については、さまざまな推察が可能ですが、9月に市長選挙があったことや当時の市長さんが多選(5選目)であったことなどが全く原因していないとは言えないように思います。岡崎市が新市長になって、おつきあいの件数や内容がどのようにかわるか、という点については今後も注目したいと思います。

(2) 町民一人当たりの支出額トップは津具村

次に、議長交際費について支出金額すら公開していない名古屋市を除いた43自治体を対象として、支出件数と同様の期間の交際費の支出額について調査しました。

支出金額そのものについては予算規模や人口によって異なりますが、今回は三ヶ月間の支出額総額を当該自治体の人口数で割り、三ヶ月間で住民1000人当たりどの位の交際費を負担しているか、という数値で比較しました。

その結果、43自治体中、住民の負担額のトップは津具村で、三ヶ月間で村民1000人あたり3万2873円(1人当たり約33円)の交際費を負担しているという結果となりました。

交際費支出額と情報の公開度とは際だった関連性が認められませんが、少なくとも交際費についての公開度が低い一色町、清洲町が支出額ではベスト10に入っていることは問題です。情報は出さないが交際費だけは出す、という行政手法は行政の説明責任を果たしているとは言えません。

(3) 身内への支出など

一覧表にはまとめませんでしたが、いくつかの自治体では、交際費の支出の相手方の多くが市の職員や職員の関係者だったところがあります。支出件数2位の豊田市については市長交際費の支出件数の約3割が市の職員や職員の関係者でしめられていました。同様のいわば「身内への支出」は日進市では市長交際費の支出28件中12件に上ります。

しかし、交際費は対外的な交際に対する費用ですから、職員や職員の関係者への支出は福利厚生費で行うべきで、交際費での支出は目的外支出の疑いがあります。

8 まとめ

 交際費支出の相手方はその長の行政に対する取り組みの姿勢を示すものです。しかし、これも交際費の支出の相手方が判明してはじめて明らかになるのです。いまだに条例未施行の自治体では公費支出の内容すら理解できない点で、本文で指摘した自治体以上に問題がある、と考えます。市制を敷いていながらいまだに今回の調査対象外とせざるを得なかった春日井市、瀬戸市、尾張旭市、安城市、碧南市、知多市の姿勢はいまや怠慢とも言えますが、これらを含め、条例を施行、制定が遅れている自治体は、施行(制定)が遅れた分、来年はランキングのトップクラスに位置付けられるような条例を携えてランキングにデビューされることを期待したいと思います。
以上


【本調査を実施したグループは以下の通りです】

名古屋市民オンブズマン 豊橋の情報公開をすすめる会 市民オンブズ岡崎市民オンブズ知多半島 豊明情報公開を考える会 愛知県消費者団体連絡会  調査についてのお問い合わせ先は以下の通りです】


名古屋市中区丸の内三丁目6番41号 リブビル6階

TEL052-953-7800、FAX052-953-7884

弁護士 新海聡(名古屋市民オンブズマン)

県内ランキング表

第3回愛知県内情報公開度ランキング採点基準

1、首長・議長交際費の情報公開開示度(38点)
@ 支出年月日(2点)
○  公開・・・・・・・・・・・・・・・・2点
△ 一部非公開・・・・・・・・・・・・・・1点
× 非公開・・・・・・・・・・・・・・・・0点
A 支出金額(3点)
○  公開・・・・・・・・・・・・・・・・3点
△ 一部非公開・・・・・・・・・・・・・・2点
× 非公開・・・・・・・・・・・・・・・・0点
B 支出の性格(3点)
○  公開・・・・・・・・・・・・・・・・3点
△ 一部非公開・・・・・・・・・・・・・・2点
× 非公開・・・・・・・・・・・・・・・・0点
C 交際相手の情報(30点)
☆ 相手方の個人名まで全面公開・・・・・・・・30点
(☆' 見舞いについてのみ、個別に判断・・・・・27点)
◎ 非個人の公開+見舞いを除く個人名の公開・・20点
○ 非個人の公開+個人名の一部の公開・・・・・15点
△ 非個人の公開+個人名の非公開・・・・・・・10点
▲ 非個人の一部の公開・・・・・・・・・・・・5点
× 全面非公開・・・・・・・・・・・・・・・・0点
2 コピー代(30点)
30点ーコピー代金(円)=得点。
3 条例の規定(30点)
@ 施行日前情報も公開対象か・・・・・・・・・・・10点
○ 施行日前情報も公開対象・・・・・・・・・・・・・10点
● 旧条例については旧条例施行前文書を対象・・・・・6点
△ 情報提供・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3点
× 施行日以後の情報のみ公開対象・・・・・・・・・・0点
A 知る権利の明記・・・・・・・・・・・・・・・・10点
○ 知る権利の明記・・・・・・・・・・・・・・・・・10点
× 明記なし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0点
B 何人も請求できるか
○ 何人も請求できる・・・・・・・・・・・・・・・・・・10点
△ 広義市民(実施機関の施策に関連する者はOKなど)・・3点
× 請求できない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0点

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