市民オンブズ岡崎

No.47  2006.3.7
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公共施設に民間活力というけれど指定管理者制度に不備がある
 
 昨年11月に愛知県市民オンブズ連絡会議に参加する名古屋市民オンブズマン、市民オンブズ岡崎、豊橋に情報公開をすすめる会は、2003年地方自治法の改正により、3年後の今年9月までに公共施設管理を管理委託方式から指定管理者制度に切り替わることを受け、県内の自治体ではどのような対応をしようとしているのか、アンケート調査をすることになりました。施設の管理状況が市民に情報公開されるのか、適正な管理がされているか、丸投げ委託はないか、市長、市議会議員、職員OBなどの関係者が公募によらず指定管理者になっていないかなどを質問しました。
 その結果は次ページ以降をお読みください。
 
 
 
 

市民オンブズ岡崎例会

 2006年

 3月9日(火)PM7:30〜

 3月23日(火)PM7:30〜




 
指定管理者制度に関するアンケート集計結果
2006.2.14
愛知県市民オンブズ連絡会議
(連絡先:名古屋市民オンブズマン)
名古屋市中区丸の内3−6−41 リブビル6階
担当:新海聡
TEL 052-953-8052 FAX 052-953-8050
 
1,はじめに
 私たち愛知県内の市民オンブズマングループは2006年9月2日の指定管理者制度の全面導入をまえに、愛知県と県内の全33市を対象として、指定管理者制度導入後の施設についての情報の公開ならびに施設の適正な管理のための公金支出の合理性についてのアンケートを実施しました。今回はそのアンケートに基づいた発表です。
2、アンケートのねらいと内容
(1)情報公開についてのアンケート
 行政や独立行政法人などの「民営化」は、民営化された団体が情報公開制度の対象からはずれるため、特別な対策が行われない場合には民営化前よりも情報が公開されなくなる、という事態を生じさせます。指定管理者制度の導入についても問題は同様です。指定管理者制度導入によって、いままで自治体が外部団体に管理委託していた施設や、自治体が直営で運営していた施設を自治体以外の民間団体が管理することになりますが、委託元の自治体が運営業務を純粋な民間団体の業務と位置づけてしまった場合には、運営の実態を示す(再)委託契約書や領収証等が情報公開の対象からはずされることが懸念されるのです。しかし、施設は税金で造られたものですし、委託料が支払われる場合には、税金で施設が運営される点で、税金の適切な使途についての市民への情報公開が必要であることは指定管理者制度の導入前と相違はありません。ところが、この点についての国の指導は、平成15年7月17日付総務省自治行政局長通知で、指定管理者に管理の実体を把握するための事項を記載した事業報告書を作成させる、とするのみで、事業報告書に業務の(再)委託契約書や領収証等の原資料の添付をすることを要件としていません。そうすると、これらの原資料の公開は自治体の運営に左右されることになります。
 そこで、今回は、各自治体の姿勢をみるために、@)事業報告書以外にその根拠となった領収証、契約書等の証票を公開する制度を準備しているかどうか、A)準備している場合には、情報公開条例によって公開される定めになっているか、あるいは要綱などの方法によって公開する定めになっているか について調査しました。
(2)適切な管理についてのアンケート
 指定管理者制度は管理受託者や自治体の直営によるよりも民間団体がより効率的な運営を行うことを期待したものですが、仮に当初定めた自治体の委託料では施設運営が赤字となる場合、無限定に補助金や交付金が支出されるとすれば、今までの制度の問題点はなんら解消されません。
一応、総務省は自治行政局長通知(平成17年7月17日総行行第87号)で、施設の適切な管理の手段として「管理にかかる業務を一括して第三者に委託することはできないものであること」を指示していますが、これを遵守するルールを各自治体がさだめないかぎりは、指定管理団体があらたな天下り先になってしまうおそれがあります。また、指定管理者制度の導入によって、地方自治法が定めている首長や自治体の議員が代表者、役員に就任している法人と自治体との請負契約の禁止規定の規制もなくなります。しかし、公の財産の管理を行うものである以上、指定管理者との請負契約においても同様の規制は必要と考えます。
このような観点から、@)単年度の収支が赤字となった場合の方策について、A)管理にかかる業務を一括して第三者に委託できない、というルールをどのように定めているか、B)首長や同自治体の議員が代表者、役員に就任している法人と指定管理者との請負契約を禁止する規定を設けているか、C)指定管理者による適正な管理を実現するために、自治体内に適正な管理を監視する機関または監視する部署を設けている(設ける予定)があるか、について調査しました。
(3)回答状況
 愛知県と県内33市中、知多市を除く32市と愛知県から回答をいただきました。ご多忙中にかかわらず、ほとんどの自治体が回答を寄せていただいたことに感謝致します。
3,調査結果
(1)情報公開について
@)事業報告書以外にその根拠となった領収証、契約書等の証票を公開する制度を準備しているかどうか
 何らの形で公開する、と回答した自治体は愛知県と岡崎・半田・津島・碧南・刈谷・安城・犬山・常滑・小牧・大府・知立・尾張旭・日進・清洲の14市、公開しない、と回答した自治体は田原・愛西の2市、検討中、と応えた自治体が名古屋・豊橋・一宮・瀬戸・春日井・豊川・豊田・西尾・蒲郡・江南・稲沢・新城・東海・高浜・岩倉・豊明の16市でした。 
A)公開方法
情報公開条例に基づく請求をした場合に、領収証まで確実に公開される方法は、ア(事業報告書に証票の添付を要求する)、イ(指定管理者を情報公開条例の実施機関とする)という方法です。しかしながら、これらのどちらかの制度をとっている自治体は、アを選択した津島・碧南市、イを選択した清洲市だけでした。
 圧倒的多数はオ(その他の方法)との回答でした。そうなると、具体的にどのような方法をとっているか、という点が重要ですが、協定書や条例に規定する行政指導による(愛知県など)、条例中に努力義務を定める(犬山市など)などの方法を回答されましたが、アンケート結果だけでは、オ、と回答した自治体について、確実に証票まで公開される制度を準備している、とまでは評価できません。なお、アと回答した自治体中、小牧市は「義務づけてはいないが、証票が添付されている場合には[行政文書]として扱う」という回答でしたが、証票が添付されていないのにこれを「行政文書」として扱わないことは許されないはずです。この回答をアと評価するためには、条例で証票の添付を義務づけていることが必要ですから、小牧市の回答をそのままアと評価できないことを付言します。 
B)総括
 公開方針、と回答した自治体でも、公開方法についてア、イと回答した自治体と条例で努力義務を定めている、と回答した自治体とでその実質は大きく異なります。私たちの見解では、情報公開の名に値する方法はア、イの方法をとることと考えますが、協定中で公開についての規定を設ける、と回答した愛知県などに対しても、協定に証票類の提出を義務づける規定を設けるなどの方法をとらない限りは、証票の公開は望めないと考えます。 
 そして、16市が検討中、と回答していること、公開する、との回答ながら、証票の添付を義務づけていないため、このままでは文書不存在決定が予想される自治体(小牧市、半田市、刈谷市)や努力義務にとどまると思われる自治体(犬山市、大府市など)など、全体として、情報公開について十分な検討を行っているとは言い難い状況にあると言えます。
 また、少数ながら、公開しない、という回答をした自治体が存在することに鑑みれば、現段階では、やはり指定管理者制度の導入は情報公開を後退させる、という私たちの危惧はぬぐえません。
 今後も指定管理者制度の情報の公開の実情をランキングなどの形で継続的にチェックする必要があると思います。
(2)適切な管理について
@)赤字の場合の方策について
 赤字の場合に補助金、交付金を注入することがある、と回答した自治体は稲沢市と江南市(ただし江南市については任意指定施設のみ)で、他の自治体ではすべて補助金、交付金を注入しない、と回答しています。
 稲沢市や江南市がいかなる場合に補助金を注入するのかについては不明です(稲沢市については協定書で整理する予定)が、赤字の場合に補助金、交付金の注入を選択枝に入れていること自体、問題と考えます。
A)業務委託(丸投げ)禁止について
 業務委託(丸投げ)禁止を条例で定めている、と回答したのは春日井市、規則と回答したのが犬山市、特に定めがない、と回答したのが瀬戸・碧南・蒲郡・高浜・岩倉・清洲の6市、検討中と回答したのが新城・豊明市で、他の自治体は協定で定める、と回答しました。
 協定で定める、とした場合には、協定違反の効果が重要です。この規定が文字通り「紳士協定」に終わってしまえば、協定でさだめたことの意味はありません。協定で定めるのであれば、何らかの形で愛知県が指定管理者の責任を追及できる規定にするか、最初から条例に禁止規定を設け、丸投げの業務委託を自治体が無効と主張できる余地を残すべきではないでしょうか。
B)首長・議員関係会社との請負契約について
 地方自治法92条の2は議会の議員に対して、同法142条は首長に対して、それぞれが首長や議員をつとめる当該地方公共団体と請負契約を締結したり、請負契約を締結する企業の取締役に就任することを禁止しています。ところが、指定管理者制度が導入されると、指定管理者と首長、議員あるいはこれらが取締役に就任している会社(以下双方を「関係会社」と言います。)と当該指定管理者とが請負契約を締結することは形式的には禁止されなくなります。しかし、これを無限定に許容することになると、指定管理者をいわばダミーのように用いて首長や議員が不当な利益をおさめるおそれも出てきます。
 この関係会社との請負契約の禁止について、協定で禁止規定を定める予定と回答したのは豊田市・豊川市だけでした。また、募集要項で資格を制限する方向で検討する、と回答したのは犬山市で、指定管理者の選考時に考慮する、と答えた自治体が小牧市、大府市、何らかの一定の制限を設ける、と回答した自治体が尾張旭市、豊明市が検討中と回答し、それ以外は特に禁止規定を設けない、との回答でした。
 禁止規定を設けない、という多数派は問題ですし、選考時や募集要項で当該指定管理者が招来的に関係会社と契約を締結するかを判断することは困難ではないでしょうか。
 指定管理者制度があらたな利権を生み出す結果となるのは好ましくないと考えます。地方自治法の規定が好ましくない、という見解に立つとすれば別ですが、地方自治法にかかる規定が存在する以上、指定管理者制度の導入に当たって、豊田市、豊川市と同様に協定をもうけることは必要と考えます。
C)監督部署について
 江南・東海・知立市が所管課以外の監督機関(審査委員会など)を設置する、という回答でしたが、多くの自治体では監督機関は検討していないようです。
 指定管理者が適切に施設を運営しているかどうかについては、市民や首長、議会が統一的に施設運営の実態を把握できることが重要です。そうすると、所管課以外の監督機関がないままで、果たして施設の管理運営状況をきちんとチェックできるのでしょうか。統一的なチェックが及ばないとなると、所管課による縦割り行政の再現にほかならず、これまでも再三税金の無駄な垂れ流しと批判された補助金行政への批判が繰りかえされるおそれがあります。
 監督機関を設置する場合には、その実効性が重要ですが、それ以前の問題として、それぞれの自治体における指定管理者による管理運営状況を納税者である市民が容易に知ることができるよう、情報を統一して公開する制度を工夫して貰いたいと考えます。
4.まとめ
 今回のアンケート結果を見る限り、指定管理者制度の導入は情報の公開を後退させることは明らかと言わざるを得ませんし、指定管理者制度が自治体における新たな利権や自治体との癒着を生み出す危険があることは否めません。
 規制緩和が新たな利権の創出にあたるとすれば、本末転倒です。自治体に対しては、情報公開の徹底と指定管理者制度が首長や議員との不正な癒着の温床とならないような制度の検討を早急に行っていただきたいと思います。
 また、私たちも今後指定管理者の問題については継続的に検討しつづけようと思います。 詳しくは別紙の通り

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