監第297号
平成15年2月21日
市民オンブズ岡崎
 渡 辺 研 治 様
 天 野 茂 樹 様
岡崎市監査委員 畝部和男

同     上野 精

岡崎市職員措置請求の監査結果について(通知)
 平成14年12月26日付けで提出のあった標記の請求について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第4項の規定に基づき監査した結果は、下記のとおりです。

1 請求の受理                            
  本請求書については、「事実証明書」の追加等の補正を求め、補正後、所要の法定要件を具備しているものと認め、平成15年1月14日、これを受理した。
2 請求の要旨
  岡崎市議会政務調査費は議員の政務調査活動を保障するため、年間一人あたり72万円が予算化された。平成12年度まで別の名称で払われていた調査研究費は36万円であり、条例化に便乗して倍額にしたものである。当時市議会議長は「予算は増やすけれど使わなければ返すし、報告書には領収書を添付するので、内容を見てもらえばわかってもらえる」と語っていた。そこで公文書開示をして内容を調査したところ、政務調査とは名ばかりの市議会議員に対する第二の報酬のような扱いがされていた。
  岡崎市政務調査費の交付に関する条例は広聴費の支出は認めているが、広報費は条例 に規定がない。したがって広報のために支出された分は条例に規定のない違法な支出である。
  パソコンが各会派に一台(五人以上の会派は二台)、プリンターが一台配当されているにもかかわらず、個人的に利用するパソコンやその関連機器、インターネット接続費用が支出され、また、会派で複数デジタルカメラや電子手帳などを購入しており、本来個人で支払うべき物品の購入が不当に支出されていた。
  石垣市が親善都市であることを考慮しても、沖絶県や九州への視察が多いのは観光旅行が目的の旅費支出であることを証明しており、特に特定な議員にあっては二度三度と出かけており、調査研究のための視索とは考えづらく、ほかの動機があることが疑われる。
  誤って二重に支出されている費用、領収書のないガソリン代や電話代、政務調査とは関係のない書籍の購入費、領収書が正当なものと思えない不合理な支出は不法・不当な公金支出であり、以上を会派ごとに整理すると下表のとおりとなる。よって、市長は市議会各派から下表の金額を徴収し、市に返還するよう請求する。

会 派返還すべき 金額
自民新風会 7,654,247円
自民党市議団 4,165,003円
ゆうあい214,735,230円
公明党1,573,624円
日本共産党岡崎市議団 644,705円
民主クラブ1,595,421円
伊藤文治552,110円
20,920,340円

 なお、具体的問題点については、資料「岡崎市議会政務調査費の支出に関する市民監査報告書」に示すとおりである。
3 監査の実施
  監査は、請求人らから証拠の提出及び請求の要旨を補足する陳述を受けたほか議会 事務局から提出された書類についての調査と、関係職員及び関係人からの事情聴取等に より実施した。
 (1)監査対象事項
  措置請求書に記載されている事項及び請求人らの陳述の内容を勘案した結果、監査 対象事項を次のとおりとした。
  平成13年度岡崎市議会政務調査費のうち、返還請求に係る支出が違法、不当な支出であるか。
(2)請求人の陳述                      
  請求人らに対し、地方自治法第242条第6項の規定により平成15年1月29日、証拠の提出及び陳述の機会を与えた。
(3)関係職員等の調査
  地方自治法第199条第8項の規定により、平成15年1月28日議会事務局関係職員に対し、平成15年1月29日及び平成15年2月6日議会各会派等関係議員に対して、それぞれ事情聴取を行った。
(4)監査執行上の除斥
  本監査請求にあたって、議会選出の監査委員は地方自治法第199条の2の規定により除斥した。
4 監査の結果  本件請求についての監査の結果は、合議により次のとおり決定した。
(1)結 論
  本件請求を棄却する。
(2)返還請求に係る事実の概要
  ア 自民新風会(返還請求額 7,654,247円)
   (ア)パソコン、周辺機器の購入等の支出(777,929円)
    a インターネット接続関係機器の購入(36,540円)
    b モデム、ルーターの購入(29,463円)
    c パソコン部品の購入(63,482円)
    d CD−Rドライブ 3台の購入(54,669円)      
    e MOドライブの購入(45,202円)
    f プリンター 4台の購入(108,280円)
    g スキャナー 3台の購入(51,457円)
    h デジタルカメラ 7台等の購入(301,182円)
    i パソコン等の修理 3件(87,654円)
  (イ)視察旅費の支出(2,361,820円)
    a 石垣市視察(838,080円)
    b 沖縄市、具志川市、多良間村視察(110,680円)
    c 具志川市、沖縄市、宜野湾市視察(1,328,160円)
    d 都城市視察(84,900円)
  (ウ)食事代の支出(534,192円)
  (エ)パソコン研修費の支出(52,000円)
(オ)書籍(エクセル説明書等)購入費の支出(28,306円)
  (カ)領収書のない支出(3,900,000円)    
    a ガソリン代(2,340,000円)
   b 電話代(1,560,000円)
イ ゆうあい21(返還請求額 4,735,230円)
(ア)パソコン周辺機器の購入費等の支出(100,297円)
   a パソコン周辺械器の購入(47,797円)
   b インターネット接続費(52,500円)
(イ)視察旅費の支出(1,925,000円)      
   a 石垣市視察(419,040円)
   b 熊本市、唐津市、古賀市、北九州市視察(245,140円)
   c 日南市、宮崎市視察(830,080円)
  d 茅ヶ崎市、東京都千代田区永田町視察・陳情(430,740円)
(ウ)食事代の支出(9,933円)
  (エ)領収書のない支出(2,700,000円)   
   a ガソリン代(1,620,000円)
   b 電話代(1,080,000円)
ウ 自民党市議団(返還請求額 4,165,003円)
(ア)パソコン、周辺機器等の購入費の支出(758,983円)
   a BSチューナーの購入(49,140円)
   b FAXの購入(38,640円)
   c DVDの購入(176,400円)
   d プリンター 4台の購入(176,132円)
   e スキャナーの購入(18,690円)
   f デジタルカメラ 3台等の購入(197,822円)
   g 電子辞書 3台の購入(102,159円)
(イ)視察旅費の支出(1,222,020円)
   a 川内市、那覇市、具志川市視察(301,680円)
   b 北九州博覧会、宮崎市(全国都市問題会議)視察(712,520円)
   c 鹿児島市、加世田市視察(114,360円)
   d 北九州市、福岡市視察(93,460円)
  (ウ)書籍(懐かしの昭和等)購入費の支出(84,000円)
  (エ)領収書のない支出(2,100,000円)
    a ガソリン代(1,260,000円)
    b 電話代(840,000円)
 エ 公明党(返還請求額1,573,624円)     
  (ア)パソコン周辺機器等の購入費(224,304円)     a プリンターの購入(28,140円)
    b スキャナーの購入(8,400円)
    c デジタルカメラ 3台の購入(149,177円)
    d ラン整備等の費用(38,587円)
  (イ)パソコン研修費の支出(136,270円)
  (ウ)書籍(「IT基礎パソコン入門」等)購入費の支出(13,050円)
(エ)領収書のない支出(1,200,000円)
   a ガソリン代(720,000円)
   b 電話代(480,000円)
オ 日本共産党岡崎市議団(返還請求額 644,705円)
(ア)パソコン周辺機器(プリンター)の購入費(47,250円)
(イ)広報費(市議団ニュース)の支出(586,565円)
(ウ)書籍(「銀の林」等)購入費の支出(7,698円)
(エ)書籍(「科学的社会主義を学ぶ」等)購入費の重複支出(3,192円)
カ 民主クラブく返還請求額(1,595,421円)
  (ア)パソコン、周辺機器の購入費(639,661円)
    a プリンターの購入(34,125円)
    b CD−RWドライブの購入(40,162円)
    c ノートパソコンの購入(229,500円)
    d パソコンプリンターセットの購入(335,874円)
  (イ)視察(長崎市)旅費の支出(63,760円)  
  (ウ)広報費(はがき購入、印刷代)の支出(142,000円)
  (エ)領収書のない支出(750,000円)
    a ガソリン代(450,000円)
    b 電話代(300,000円)
 キ 伊藤文治議員(返還請求額 552,110円)
  (ア)視察旅費の支出(322,860円)
   a 石垣市(4月)視察(139,680円)
   b 石垣市(11月)視察(183,180円)
  (イ)広報費(市政報告書印刷代)の支出(29,250円)
  (ウ)領収書のない支出(200,000円)
    a ガソリン代(120,000円)
    b 電話代(80,000円) 
 ク 監査対象の除外
   上記ア(オ)の書籍購入費のうち、エクセル説明書等のIT関連図書及びビジネ
  ス書(2002年日本経済)を除く語学書等の一般図書8点9,553円、並びにウ(ウ)、
  オ(ウ)・(エ)の書籍購入費については、市に返還されることが明らかなため、
  監査対象から除外した。
(3)理 由
  平成12年5月24日、地方自治法の一部を改正する法律(平成12年法律第89号)の成立により、議員の調査研究に資するための経費の一部として「政務調査費」を、条例 で定めるところにより「会派又は議員」に対し支給することができることとなった。
  岡崎市においても、「岡崎市議会政務調査費の交付に関する条例(以下「条例」とい う。)」を定め、平成13年4月1日から施行している。従前は「岡崎市議会調査研究費補助金」として議員1人あたり年額360,000円が交付されていたが、平成13年度からは、 720,000円に増額されている。
  また、議長あてに収支報告書の提出が義務付けられており、本市も条例第7条により、収支報告書の提出を義務付けるとともに、一層の透明性を確保するため、支出に係る領収書等の写しを提出するよう定めている。
  使途基準については、条例第5条に「別表に定める使途基準に従い使用するものとする。」としており、その別表により@研究研修費、A調査旅費、B資料作成費、C資料購入費、D広聴費、Eその他の経費の6項目に分類し、各項目の内容を定めている。
  そこで、以下この使途基準に沿って、本件各支出行為について検討する。
  @ 研究研修費の支出について          
 前記ア(ウ)の食事代の支出については、自民新風会所属議員が議会活動を行なうための知識や情報を得るために、それぞれテーマに応じて講師を招いて、勉強会を開催した際支出したもので、「会派の毎月定例勉強会取扱」により、会場費と食事・弁当代を1名3,500円とし、個人負担の懇親会等の費用とは区分して定められている。勉強会は13回実施され、各議員の議会、委員会での質問や調査研究に役立っている。このような会場費を含めた食事・弁当代の支出が社会通念上相当とする範囲を著しく超えているとは思われない。
 前記ア(エ)のパソコン研修費の支出については、配備されたパソコンや購入した周辺機器を有効に活用し、会派議員の効率的な議会活動を図るために実施されており、その成果は資料作成や視察報告会等に活用され、議員の情報交換や情報の共有化にも役立っており、使途基準に反しているとは思われない。
 前記イ(ウ)の食事代の支出については、午前中勉強会としてゴミ対策事業等の現場視察を行い、その後引き続いて会派議員の意見交換をしたときの昼食代(1人あたり約1,100円)であり、社会通念上相当とする範囲内にあると思われる。       
 前記エ(イ)のパソコン研修費の支出については、その目的、効果は上記ア(エ)と同様で、加えて市主催のIT講習会へ出席しての成果を踏まえ、知識、技能のさらなる向上のため実施したもので、会派のホームページ作成などにも役立っており、使途基準に反しているとは思われない。
  A 調査旅費の支出について
 前記ア(イ)aの石垣市視察については、中央総合公園の整備を進めるうえで、サッカー場建設の必要性の検証とゴミ処理行政の実態調査を行っている。
 前記ア(イ)bの沖縄市、具志川市、多良間村視察については、本市の自然体験の森の整備を進めるための参考として、沖縄市こどもの国の実態調査と、沖縄県の各自治体それぞれの特徴を活かした街づくりの実情を調査している。
 前記ア(イ)cの具志川市、沖縄市、宜野湾市視察については、具志川市のEMによる癒しの街づくり事業の進捗状況と、宜野湾市のTMOによる中心市街地活性化事業等の実態調査を行っている。なお、稲垣議員が上記ア(イ)bの具志川市に同一目的で視察をしているのは、EMに係る8カ月経過後の進捗状況と実績を検証する必要性があったことによるものである。    
 前記ア(イ)dの都城市視察については、本市の駅東土地区画整理事業やシピックコア地区整備事業を進めるうえで、都城市のシピックコアに伴う市街地の再開発を調査するとともに、本市の生涯学習計画を策定し実施するために、生涯学習による街づくりについて検証している。
 前記イ(イ)aの石垣市視察については、中央総合公園の整備を進めるうえで、サッカー場建設の必要性の検証とゴミ処理行政の実態調査を行っている。
 前記イ(イ)bの態本市、唐津市、古賀市、北九州市視察については、本市も効率的な行政運営を行うため、行政改革の堆進やバランスシートの導入を検討しているが、その先進都市である熊本市の実態調査をするとともに、唐津市のゴミ手数料の有料化の考え方と問題点、各市のきめ細かい福祉行政の実態調査をしている。
 前記イ(イ)cの日南市、宮崎市視察については、全国都市問題会議に参加し、ボランティアと街づくりに対する考え方と各市の事例発表を聴講するとともに、日南市の中心市街地活性化事業の調査を行っている。       
 前記イ(イ)dの茅ヶ崎市、東京都千代田区永田町視察・陳情については、市民病院の医療事故の防止を図るための危機管理体制を作る必要性があり、先進的な取り組みをしている茅ヶ崎市民病院の実態調査をするとともに、国土交通省の道路行政や河川行政に対する取り組みと新事業の情報収集を担当職員等から行っている。なお、国会陳情は主たる目的ではない(その意味で視察内容を国会陳情としたのは適切ではない。)。
 前記ウ(イ)aの川内市、那覇市、具志川市視察については、各自治体のそれぞれの特色ある街づくりの実情と那覇市の福祉複合施設の調査を行っている。
 前記ウ(イ)bの北九州博覧会、宮崎市(全国都市問題会議)視察については、全国都市問題会議に参加し、ボランティアと街づくりに対する考え方と各市の事例発表を聴講するとともに、北九州市の博覧会における集客方法等の実態調査を行っている。
 前記ウ(イ)cの鹿児島市、加世田市視察については、鹿児島市の健康管理システムと健康の森公園の実態調査を行うとともに、加世田市の吹上浜砂の祭典の調査を行っている。
 前記ウ(イ)dの北九州市、福岡市視察については、本市の街づくりの参考とするため、福岡市の防災行政の実情調査をするとともに、北九州市の活性化施策と図書館の調査を行っている。
 前記カ(イ)の長崎市視察については、長崎市の企共交通の実態、特に路線バスの空白地域の取り組みについて調査を行っている。
 前記キ(ア)a・bの石垣市視察については、石垣市の汚泥処理対策の進捗状況と、観光都市としての取り組みに対する実態の調査をするとともに、石垣市議会との情報交換をしており、同一箇所へ2回視察した目的は、汚泥処理対策の半年経過後の進捗状況及び結果を確認する必要があったことによるものである。
 上記のとおり、それぞれ目的をもって視察が実施されており、その効果については議会や委員会においての質問の作成等の参考として活用され、議決機関としての使命である審議に役立たせており、調査に名を借りた観光旅行であるとすることはできない。
 政務調査費の視察旅費の支出については、この形態が一般行政調査や委員会による視察と何ら変わるものではなく、政務調査費に係る取扱要領の「使途基準」に岡崎市職員等の旅費に関する条例に準じて支出するものとしており、特別車両料金を含めた旅費の支出について違法、不当なものとすべき点は見出し得ない。
 また、航空運賃については「現に支払った旅客運賃による。」としているが、領収書等の添付は義務付けられていない。
  B 資料作成費の支出について
 前記ア(ア)a・bのインターネット接続関係機器等の購入については、市庁舎内の会派控え室に設置のパソコンヘのインターネット分配による、調査の迅速化と会派内議員間の情報共有化を図っている。
 前記ア(ア)c・d・e・f・g・hのパソコン周辺機器等の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書の作成、整理と、会派の議員による情報の共有化、連絡の迅速化を図るためのものである。
 前記ア(ア)iのパソコン等の修理については、会派備え付けのパソコンを13人で共用しており消耗が激しく、保障期間内の「無償修理の対象外」の消耗品指定部品の修理をしたことによるものである。
 前記イ(ア)aのパソコン周辺機器等の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書の作成、整理と、会派の議員による情報の共有化、連絡の迅速化を図るためのものである。
 前記イ(ア)bのインターネット接続費については、市庁舎内の会派控え室に設置のパソコンヘのインターネット接続費用で、議員活動や議会、委員会においての調査研究をするための情報収集と、会派議員間の情報交換や情報の共有化を図るためのものである。      
 前記ウ(ア)a・cのBSチューナー、DVDの購入については、議員活動や議会、委員会における質問の作成や資料整理のための情報収集の迅速化を図るためのものである。
 前記ウ(ア)bのFAXの購入については、市庁舎内の会派控え室に設置し、議会、委員会活動のための情報を迅速に収集するためのものである。
 前記ウ(ア)d・e・fのパソコン周辺機器等の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書の作成、整理と、会派の議員による情報の共有化、連絡の迅速化を図るためのものである。
 前記ウ(ア)gの電子辞書の購入については、書籍と比べ小型、軽量で機動性に優れ、活字も読みやすく、議会や委員会活動のための正確で効率的な情報収集を図るためのものである。
 なお、上記購入物品のなかで、3点(BSチューナー、デジタルカメラ、プリンター)の領収書が同日、同価格で一見不自然であると見受けられるが、これらは価格交渉による値引きがあったことによるものである。
 前記エ(ア)a・b・C・dのパソコン周辺機器等の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書の作成、整理と、会派の議員による情報の共有化、連絡の迅速化を図るためのものである。
 前記オ(ア)のプリンター購入については、会派に配備された機器の印刷サイズがA4で小さいなど機能的に不足しているため、A3サイズの印刷が可能な機種を購入している。
 前記カ(ア)a・b・C・dのパソコン、周辺機器の購入については、視察や日頃の議員活動における資料や報告書の作成、整理等と、会派の議員による情報の共有化、連絡の迅速化を図るためのものである。
 上記のとおり、パソコン、周辺機器等の購入などの資料作成費に係る支出について
は、IT機器の活用による情報の共有、事務処理の合理化、迅速化が求められることは議員活動においても当然の社会的要請であることからすれば、それぞれの支出について、これを使途基準に反しているとすることはできない。
  C 資料購入費の支出について
 前記ア(オ)・エ(ウ)の書籍購入費については、これらの書籍は市政全般にわたり高度な識見による議会活動能力が要求される議員としての調査能力を高め視野を広げる目的で購入されたものであり、いずれも会派控室に備えられ、会派において管理し、議会や委員会活動等で利用されており、私的使用のものであるとの断定はできない。(なお、ア(オ)の内訳は、エクセル説明書等のIT関連図書及びビジネス書(2002年日本経済)である。)
  D 広聴費の支出について
    広聴費の支出については、本監査請求の監査対象となる指摘事項はない。
  E その他の経費の支出について
 その他の経費については、前記@からD以外の経費で、会派等が行う調査研究活動に必要な経費として議長が必要と認めたものとしており、「岡崎市議会政務調査費交付取扱要領」に使途基準が定められている。そのなかで、(a)会派等が行う調査研究活動及び議会活動並びに市の政策について住民に報告、PRするために必要な経費、(b)資料作成等会派事務のための委託料、アルバイト貸金、筆耕翻訳料、(c)会派事務のための通信運搬費としての郵便料(切手・はがき・小包・速達・書留)を使途に充当できる経費としている。
    前記オ(イ)の広報費(市議団ニュース)の支出は、会派議員の活動報告、議会や委員会での決定事項等を市民に報   告するためのものである。
 前記カ(ウ)の広報費(はがき購入、印刷代)の支出は、会派議員の活動報告、議会や委員会での決定事項等を市民に報告するためのもので、印刷代には、はが   きの他に、チラシも含まれている。
 前記キ(イ)の広報費(市政報告書印刷代)の支出については、議会や委員会での決定事項等、議会の活動報告を市民に報告するためのものである。
 これら広報費の支出は、いずれも上記(a)の規定に該当しており、違法性はないというべきである。
 前記ア(カ)a・b、イ(エ)a・b、ウ(エ)a・b、エ(エ)a・b、カ(エ)a・b、キ(ウ)a・bのガソリン代、電話代の支出については、事務の煩雑化を防ぐため各派代表者会議において、実費を下回る額として、「ガソリン代15,000円、電話代10,000円を限度」とする申し合わせをし、事務の簡素化を図るため各派代表者が金額を確認した上で、「政務調査費支払証明書」を作成することで領収書に代え、支出することができることとしている。
 ガソリン代の積算根拠は、議員が行う市内及び周辺市町村への調査活動には自家用車を使用することが多いところ、議員が調査活動をするための旅費の支出はされておらず、他都市では職務を行うための費用について、地方自治法第203条第3項により費用弁償を受ける例も見られる。しかし、本市においてはかかる支出はしていない。また、近年では議員の専業化が進み、議会閉会中にも登庁して活動をしている。そこで、議員の調査研究活動の拠点となる市内旅費について「旅費に関する条例」で計算すると、市中央部から周辺部(4地点)への活動を月に20日実施したとして16,000円になる。実際には議員は休日にも活動し、周辺市町村にも活動を広げているため、常識的な議員の調査活動には月額15,000円を超える利用があるものと考えられることによったものであり、合理性がある。
 電話代の積算根拠は、市議会だよりに議員あて連絡用として記載した加入電話、議会事務局に登録してある連絡用のFAX専用回線、議会事務局に登録してある緊急連賂用の携帯電話、以上の3種の電話回線について最低限の使用回数を想定し、加入電話、FAXで3分以内の市内電話を1日5回、携帯電話で1日につき2分間通話したものとして試算した結果、常識的な議員の調査活動には月額10,000円を超える利用があるものと考えられることによったものであり、前同様合理性がある。
 このように、ガソリン代、電話代の積算根拠にはいずれも合理性があり、定額による実費補助とした支出方法についても妥当性を欠くとの断定はできない。
 ちなみに日本共産党岡崎市議団においては、前記「申し合わせ」とは別の方式でこれら費用を支出しており、これも一つの見識として注目に値するが、事柄の性質上これをもって定額支出を不当とすることはできない。
 よって、本件各支出行為は、いずれも請求人らが主張する違法、不当な支出であるとは認め難いから、本件請求はこれを棄却する。
(4) 本件についての、監査委員の意見は以上のとおりであるが、これに関連し二三付言する。               広聴活動と広報活動は表裏一体の関係にあるものであり、広報費は、全国市議会議長会の「政務調査費の交付に関する標準条例等検討委員会報告書」に条例として例示されており、他都市においても条例のなかで規定しているところも多くある。本市においても、広報費も政務調査費用に含まれる旨を条例別表あるいは規程として議会告示等でこれを 公にしておけば、市民から違法支出との指弾を受けることはなかったものと思われる。その意味で規定の在り方について一考を要するものと思われる。
  また、旅費については、議員のみならず市職員全般に及ぶことであるが、たとえば「現に支払った旅客運賃による。」とされている航空運賃については、「国家公務員等の旅費に関する法律」には、概算払に係る旅費の精算に、その支払を証明するに足りる書類の添付が必要とされている。旅費支給の在り方についても、今後一層の透明性を高めるうえで検討されることが望ましい。
  ガソリン代、電話代の支出事務については、前述のとおりであるが、他の自治体の実情を調査してみると政務調査費の額とも関連するが、実費支出のところも多くみられ、運用方法の検討の余地があるものと思われる。
  書籍の購入についても、議員としての資質、調査能力等の向上、情報収集のため、欠く事のできないものであり、本件図書については、これを不当と断ずることはできないと判断したが、政務調査費としての支出の必要性については、市民の常識と乖離することのないよう十分意を用いられたい。

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