調

市民オンブズ岡崎
                                   岡崎市監査委員  畝部和男
                                                上野 精
                                                加藤繁行
                                                坂井一志
      岡崎市職員措置請求の監査結果について(通知)
  平成13年8月7日付けで提出のあった標記の精九日ついて、地方自治法(昭和22年法
律第67号)第242条第3項の規定に基づき監査した結果は、以下のとおりです。
                          記
1 請求の受理
  本請求書については、所要の法定要件を具備しているものと認め、平成13年8月7
 日、これを受理した。
2 請求の要旨
  平成12年12月2日から9日までの8日間、第16回岡崎市海外労働事情調査団委
 託事業として、月山招久(中電労組委員長)始め11名は、カナダ、アメリカ合衆国両
 国を訪問した。この事業に関する情報公開条例に基づく文書公開の折、「岡崎市が委
 託する労働事情調査」の内容について問いただしたところ、担当課長は「内容はカナ
 ダ、アメリカの労働事情の調査であり、内容については何も指示していない。」と語っ
 たとおり行政行為に必然性がない。「岡崎市海外労働事情調査団行動記録」に記載さ
 れている移動距離、移動手段、訪問先を勘案すると、その大半を観光地巡りと移動時間
 に費やしており、労働事情調査とは名ばかりの労働団体代表者に対する観光旅行サービ
 スであり、市長が特定な労働団体の推薦を得るために便宜供与してきたものと思料さ
 れ、岡崎市の労働行政を推進するものではなく、不法不当である。特に加藤学は岡崎市
 職員組合委員長であり、労使の癒着となり許されるものではない。このような「調 
 査団」に多額の税金が使われることは、市民の合意は得られないばかりでなく、その報
 告書を見ても、「岡崎市行政として調査報告が活用される」方向性は浮かんでこない。
 それぞれの労働団体に必要性があれば自前で調査すればよい事柄ばかりである。また、
 労働事情調査に担当とは関係ない障害援護課長(当時)を随行させたのは、海外労働
 事情調査自体が不要なものである証左である。さらに、同年5月12日の打合せ会では
 視察先がカナダ・アメリカとなっているにもかかわらず、5月15日に起案した業者へ
 の旅行見積は北米及び欧州の2案を求めており、旅行業者選定過程における作為は正当
 な入札が行なわれず、特定な業者に落札させるために、視察がカナダ・アメリカである
 ことを伏せて見積もらせた疑いがある。これらによって、岡崎市に311万2680円の
 損害を与えた。
   よって、月山招久始め10名及び随行員大橋功(前障害援護課長)に係る支出は不当
 な公金支出であり、上記11名と旅行業者は岡崎市長と連帯して、岡崎市に旅費を全額
 返還させることを請求する。
3 監査の実施
  監査は、請求人らから証拠の提出及び請求の要旨を補足する陳述を受けたほか、市当
 局から提出された書類についての調査と関係職員からの事情聴取等により実施した。
 (1) 監査対象事項
    措置請求書に記載されている事項及び請求人らの陳述の内容を勘案した結果、監査
   対象事項を次のとおりとした。
    岡崎市海外労働事情調査に係る調査団派遣委託料及び随行職員旅費計3,112,
   680円の支出は,不当な公金支出であるか。
 (2) 監査対象職員
    監査対象職員は、柴田紘一岡崎市長、大橋功社会福祉課長、加藤学岡崎市職員組合
   執行委員長とする。
    なお、措置請求書に記載されている調査団参加者11名のうち上記大橋、加藤2名
   を除く月山招久始め9名及び旅行業者は、地方自治法第242条第1項に規定する「
   職員」に当たらないことが明らかであるので、この監査対象から除外する。
 (3) 請求人の陳述
    請求人らに対し、地方自治法第242条第5項の規定により平成13年9月7日、
   証拠の提出及び陳述の機会を与えた。
4 監査の結果
  本件請求についての監査の結果は、合議により次のとおり決定した。
 (1) 結 論
    本件請求を棄却する。
 (2) 事実の概要
   ア 海外労働事情調査団参加者
     市は、参加者の選定に当り市長名をもって、連合愛知三河中地域協議会、愛知県
    労働者福祉協議会岡崎・額田支部及び財団法人岡崎市勤労者共済会に推薦依頼を
    し、各組織の推薦に基づき参加者10名を決定している。随行は市職員1名で、計
    11名の参加者名簿は次表のとおり。
氏名 勤務先・役職名(当時) 備考
月山招久 中部電力労働組合岡崎総支部 執行委員長 団長
加藤佳昭 豊興工業労働組合 執行委員長
加藤 学 岡崎市職員組合 執行委員長
加藤博治 ドミーユニオン 中央執行委員長
直塚政之 ユニチカユニオン岡崎支部 副委員長
森 正男 (社)岡崎市医師会
笠原武浩 フタバ産業労働組合 書記長
石井保和 名古屋鉄道労働組合東部支部 支部委員長
川手一広 マルヤス工業労働組合 副委員長
10 藤田 護 (株)クイックパック
11 大橋 功 岡崎市役所 障害援護課長 随行
   イ 海外労働事情調査日程
     海外労働事情調査は、平成12年12月2日から平成12年12月9日までの
    8日間で実施されており、日程内容については次表のとおり。
月日 内容
12月2日(土) 名古屋空港発
トロント着                 (機中泊)
12月3日(日) 国立公園整備状況視察
水資源活用システム見学       (トロント泊)
12月4日(月) 総合病院施設見学
公共団体関連労働組合との懇談会 (トロント泊)
12月5日(火) 市街地活性化施設見学
トロント発
ニューヨーク着           (ニューヨーク泊)
12月6日(水) 市街地活性化施設見学
都市交通システム見学     (ニューヨーク泊)
12月7日(木) サービス業関連労働組合との懇談会
商業ビルメンテナンス会社の施設見学
                   (ニューヨーク泊)
12月8日(金) ニューヨーク発              (機中泊)
12月9日(土) 名古屋着
  ウ 支出事務について
  (ア) 委託料
      委託契約年月日  平成12年11月2日
      支出年月日     平成12年11月21日
      支出金額       2,700,000円
      (市は業務委託に必要な経費の3分の2を限度として委託料を算出しており、
     今回、参加者1人に要する費用は405,000円で、このうちの3分の2に
      当たる額270,000円が委託料となっている。)
  (イ) 随行旅費
      支出年月日     平成12年11月21日
      支出金額       412,680円
(3) 理 由
  ア  海外労働事情調査の目的及びその効果について
     本調査は、岡崎市在住、在勤の労働者を広く海外に派遣し、外国の労働組合の活
    動の有様、行政との関わり、組合の地域での役割・街づくりへの参加等の情報交換
    の中、それらの実際と実績をつぶさに調査、研究することにより、国際的な視野を
    広げ、価値観を体験し、もって、今後の職場環境の改善・労働活動の広域化による
    行政への寄与を目的としており、視察先については、労働組合活動が進歩している
    国の中から、今回は、カナダ・アメリカ合衆国を視察先として選定している。平成
    12年10月25日に開催された「調査団派遣説明会」の時点で視察先が未定とさ
    れていたのは、主として、6月以来継続して受け入れ交渉をしていた、カナダの労
    働団体と企業の受け入れが相手側の都合により困難となり、急遽変更したためであ
    る。
     なお、当然のことながら、同年11月17日の調査団結団式の時点では、カナダ
    における受入先、調査日程も確定している。
     調査の成果については、「海外労働事情調査報告書」として提出されており、「
    各調査先労働組合との懇談会の記録及び参加団員の各団員報告」によれば、限られ
    た日程の中で調査目的に沿った活動がなされ、それぞれ相応の成果をあげているこ
    とが認められる。この種調査の成果については、事柄の性質上直ちにそれが表れる
    ものばかりでなく、長期的な視野にたって今後の市の労働行政に役立つものであれ
    ば、その目的に叶うものということができる。
  イ  参加者の選定について
     参加者の選定について、市は、市長名をもって連合愛知三河中地域協議会、愛知
    県労働者福祉協議会岡崎・額田支部及び財団法人岡崎市勤労者共済会に推薦依頼を
     し、各組織の推薦に基づき参加者10名を選定している。これらの3団体は、勤労
    者福祉の充実と発展に向けて積極的、自発的に労働者福祉活動を推進しており、そ
     の傘下に多くの団体と会員数を有しており、このような巾広い組織の中から参加者
    を決定することは、平等性を書いているとは思われない。
     随行職員については、市職員の海外派遣研修について定めた「岡崎市職員海外派
    遣研修実施要綱」に基づき、海外研修に派遣する候補者を選ぶ中で、海外労働事情
    調査団の随行候補者も、岡崎市海外派遣研修者選考委員会において人選されてい
    る。随行者は、調査団の日程がスムーズに進行するようにスケジュールの管理をす
    ること、訪問先の連絡等や参加者の体調・健康に気を配ることなど、さまざまな庶務
    的事務を処理する立場にあり、事柄の性質上労働行政担当職員以外であっても、
    特に問題はないと思われる。
   ウ 支出事務について
      支出事務については、平成12年11月21日、委託料2,700,000円、
    随行旅費412,680円がそれぞれ支出され、事務手続きは適正に執行されている。
     なお、市は業務委託に必要な経費の3分の2、上限300,000円を限度とし
    て委託料を算出しており、今回、参加者1人に要する費用は405,000円で、
    このうちの3分の2に当たる額270,000円が委託料となっており、135,
    000円が個人負担となっている。
   エ 旅行業者の選定について
     旅行業者の選定については、参加者を募集する時点で、行き先、内容、旅費等を
   概ね把握し、参加者に周知する必要があるため、事前に行政側が複数業者に見積り
   依頼をしている。また、視察の候補地を2ヶ所として見積り依頼したのは、視察
   先の第1候補地はカナダ・アメリカ合衆国、予算上無理な場合を考えて第2候補地
   を欧州としたためで、5月12日の打ち合せ会では1ヶ所に決定しておらず、特定
   業者に落札させるためのものではない。このことは、請求人提出に係る資料「海外
   労働事情調査団打ち合せ会」中の「日程案派遣先・時期決定ー平成12年5月ー
   5/末」との記載からも明らかである。
    以上の次第で、岡崎市海外労働事情調査に係る公費の支出は適正であり、不当な
   公金支出であるとして、返還を求むべき事由はなく、本件の措置請求については、
   理由がないものと判断する。
    よって、本件請求を棄却することとする。
    なお、付言をすると、上記理由アに述べたとおり、この海外労働事情調査は、所
  期の目的を達成しているが、より一層の成果をあげるために、その目的とするとこ
  ろを、各参加者により周知し、かつ、深く理解させる意味において「実施要綱」に
  市が委託する業務内容をより詳細に明文化することが必要であり、また、「海外労
  働事情調査報告書」の中の行動記録にある私的な記述については、本来の調査内容に焦
  点を絞り、記載すべきものである。今後、以上2点について留意されるよう望むものである。  

ニュース13へ