監第57号
平成15年5月2日
市民オンブズ岡崎
 渡 辺 研 治 様
 天 野 茂 樹 様
岡崎市監査委員 畝部和男

同     上野 精

同     村越恵子

同     野澤幸治

岡崎市職員措置請求の監査結果について(通知)
 平成15年3月12日付けで提出のあった標記の請求について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第4項の規定に基づき監査した結果は、下記のとおりです。

1 請求の受理                            
  本請求書については、所要の法定要件を具備しているものと認め、平成15年3月12日、これを受理した。
2 請求の要旨
  「宅地内排水調査業務」は聞くところによれぱ、1993年頃から行われている。そ
   もそも宅地内は私有地であり、宅地内排水路をどうするかは自己責任で決めればよいも
 のであり、業者の営業活動に委ねれぱ足りる。事業活動と密接な関係があれぱ間違いな
 く積極的に、市の下水道への接続について営業活動が行われるはずである。よって本来
 不要な業務であった。同じく流域下水道に接続させる西三河8市の同様業務を調査した
 ところ、6市が調査業務の委託をしていないことからも明らかである。宅地内の排水を
 どうするかは私権に関わるものであり、行政がタッチすべきものではない。そのため、
 西三河各市は調査委託をしていなかったと考えられる。例外的に西尾市だけが「説明及
 び取付管設置位置調査1,670円並びに承諾書回収2,890円(一戸当り)」を地
元下水道組合に委託しているが、それでも岡崎市下水道部が契約した額(1戸当り約1
 万円)の半額である。よって、もし必要であったとしても不当に高額な支出であった。
  さらに、2000年度から2002年度にわたって執行した「宅地内排水調査業務契
 約」について2002年11月2日に談合情報が寄せられた。2000年度は4回の入
 札があり、不調に終わった9月26日以外は「シュアリサーチサービス名古屋営業所」
 が落札(33,450,000円)している。また、2001年度は4回の入札があっ
 たが、すべて「シュアリサーチサービス名古屋営業所」が落札(70,600,000
 円)している。さらに2002年度においても談合情報のとおり、同じく[シュアリサ
 ーチサービス名古屋営業所」が4回すべて落札(61,400,000円)している。
 いずれも談合によって著しく市が損害を被った違法な支出であった。
  よって、不法・不当な公金支出を承認した市長及び下水道部契約及び支出担当者(支
 出負担権限者、支出命令権者、支出行為者及びそれらの代決者)は「シュアリサーチサ
 ービス名古屋営業所」と連帯し、金165,450,000円全額を市に返還させる等
 の適切な措置を講ずるよう勧告することを求める。

3 監査の実施
  監査は、請求人らから証拠の提出及び請求の要旨を補足する陳述を受けたほか、下水
 道部から提出された書類についての調査と、関係職員及び関係人からの事情聴取等によ
 り実施した。
(1)監査対象事項
   措置請求書に記載されている事項及び請求人らの陳述の内容を勘案した結果、監査
  対象事項を次のとおりとした。
   平成12年度から平成14年度に実施した、宅地内排水調査業務委託に係る支出が
  違法、不当な支出であるか。
(2)請求人の陳述
   請求人らに対し、地方自治法第242条第6項の規定により平成15年4月9日、
  証拠の提出及び陳述の機会を与えた。
(3)関係職員等の調査
   地方自治法第199条第8項の規定により、下水道部及び総務部関係職員並びに株
  式会杜シュアリサーチサービス名古屋営業所始め本業務委託に係る入札に参加した
  16社に対して、それぞれ事情聴取を行った。

4 監査の結果
  本件請求についての監査の結果は、合議により次のとおり決定した。
(1)結論
本件請求を棄却する。
(2)返還請求に係る事実の概要
宅地内排水調査業務委託の返還請求額に係る入札日、落札金額及び契約の相手方の
内訳は次表のとおり。

入札日落札金額(円)契約の相手方
平成12年 5月11日  2,450,000株式会社シュアリサーチ
サービス名古屋営業所
(以下「シュアリサーチ
サービス」という。)
平成12年 5月23日 31,000,000
平成13年 6月 5日 34,000,000
平成13年10月23日 31,000,000
平成13年12月 3日  2,800,000
平成14年 1月16日  2,800,000
平成14年 5月 9日  2,600,000
平成14年 6月14日  2,800,000
平成14年 7月 9日 29,000,000
平成14年11月 5日 27,000,000
165,450,000

(3)理由
ア 宅地内排水調査業務委託の必要性について
公共下水道工事は、供用開始された道路区域内で施工されることが多く、工事の
性質上、下水道管と取付管、公共桝を一体的に整備しなければならず、同時に整備
区域周辺の生活者や道路使用者への影響をできる限り少なくすることが必要とな
る。そのため、工事旋工を計画的に進めることが望ましく、公共桝の位置決め確認
が工程管理上重要な要件となる。また、接続や改造をする排水設備設置義務者等の
工事者の意思確認を速やかに得る必要もある。
公共下水道がいかに整備されても、これが利用されることなく各家庭等の下水が
公共下水道に流入されず依然として地表に停滞したり、在来の側溝に流出していた
のでは、下水道法本来の目的は達成されず、公共用水域の水質保全が図られないと
考えられる。
このように、排水設備は私人の所有物であるが、機能や役割としては下水道とな
んら変わるものではない。既存の建物は、浄化槽排水、雑排水、雨水が合わさった
状態で放流されていることが多く、また、排水状況の現状把握をしている設置者は
ほとんどなく、汚水と雨水を分離した分流方式に切り替える排水設備の改造工事を
適切に遅滞なく設置者において実施されることが下水道整備の目的を達成するうえ
で重要となる。
請求人は、宅地内の排水をどうするかは私権に関わるものであり、行政がタッチ
すべきものではないというが、以下の理由によりこれに賛成することはできない。
即ち、下水道工事が完了し、公共下水道が供用開始されたときの、排水区域の私人
の排水設備の設置義務については、下水道法第10条で遅滞なく設置しなくてはな
らない旨が規定され.ており、また、岡崎市下水道条例第3条において、6箇月以内
に排水設備を設置しなければならないと規定されている。
上記のとおり、下水道法には公物法としては極めて特異な「利用の強制」が設け
られており、その観点から考えても、公共下水道管理者として市における宅地内排
水調査業務の執行は、増大する公共下水道事業を遂行するなかで、排水設備の適切
な接続確認、下水処理費や処理場の負荷の抑制、普及促進のための説明会用改造説
明資料・設置義務者用相談資料として活用するためのものであり、市民サービスの
向上や下水道の適正化に有効であり、費用対効果の点からみても、業務委託方式に
よったことについては合理性があるものと認められる。
なお、他の自治体の実情について調査したところ、公共下水道の供用開始に伴う
公共桝の位置決定を業務委託している市は、当然のことながら西尾市以外にも見受
けられるところであり、業務委託をすること自体に問題ありとすることはできない。
イ 業務委託の積算について
本業務委託の目的を達成するための作業内容や成果品作成に当たっての数量を算
出した設計図書に基づき県単価、刊行物等を算出根拠とし適切な積算を実施してお
り、問題視すべき点は見いだし得ない。
なお、西尾市の委託金額が本市の半額以下との指摘については、委託内容が異な
るため比較の対象とすることは適切でない。
ウ 業務委託の指名審査及び入札事務について
業務委託については、行政組織規則に基づき、設計金額が500万円以上の場合
には、岡崎市入札参加者審査委員会規程第2条の規定による、指名競争入札に参加
させる者の指名審査及び決定並びに指名競争入札事務を契約課(平成13年度、
14年は管財契約課)に依頼し、50万円以上500万円未満の場合は、業務委
託担当課で、入札事務を執行している。
業者の指名に当たつては、指名競争入札参加資格者名簿のなかから業務規模・業
務内容から勘案し、実績及び技術力等を総合的に評価し業者を指名している。
予定価格の作成については入札直前に行われており、いずれも適切な入札が執
行されている。
平成12年度の入札不調による再入札となった要因として、請求人は、この年に
下水道部の担当者が異動し、新しく担当した職員が出した設計金額が従前よりかな
り下がっていて、シュアリサーチサービスがそれを知らず前年度と同様な金額で入
札に臨んだところ、3回の入札でも落札できなかったためと主張するが、当該年度
において下水道部担当職員の人事異動の事実はない。
また、入札業者を総入れ替えをして行った再入札で株式会杜オオバ名古屋支店
(以下「オオバ」という。)が落札したが、その際シュアリサーチサービスが下請
けに入り、違法な契約の丸投げが行われていたとの指摘については、オオバ、シュ
アリサーチサービス及び下水道部関係職員に対し調査を行ったところ、いずれも一
括下請負を否定しており、この事実があったと断定することはできなかった。
エ 談合行為について
シュアリサーチサービス始め入札参加業者16社に対し関係人調査を行ったとこ
ろ、談含行為の存在を疑うに足りる事実を確認することはできなかった。
請求人はまた、過去11回の入札のうち、不調に終わった1回を除き、すべてシ
ュアリサーチサービスが第1位(最低価格入札)であつたことをもつて談合を疑う
べき証左とするが、業者の企業規模、経験、得意とする分野か否かといった客観的
条件により価格競争カが異なるものであること、当該工事落札への意欲の強弱によ
り、いずれの入札においても落札する結果になる可能性を否定できないことなどか
らすれば、請求人のいうところは、談合行為があったとすればこれと矛盾しないと
いう程度にとどまるものであり、このことから、直ちに当該入札が談合によるもの
であったと推認することはできない。
なお、公正取引委員会においては「国家公務員法(昭和22年法律第120号)第
100条第1項及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法
律第54号) 第39条の規定により回答できません。」とのことであった。

以上のように、本件に係る公費の支出は適正であり請求人が主張する違法、不当
な公金支出であるとして、返還を求むべき事由は、これを認めることができないか
ら、本件措置請求については理由がないものと判断する。
よって、本件請求を棄却することとする。

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